8-25 笑顔で御する
「シッカリなさいませ。」
祝辺の守、クワッ。
「いやイヤ嫌よ、閉ざしますぅ。シズエ、何とかして。」
御目を潤ませ、使わしめに縋る国つ神。
「山守神。シャキッと為さいませ。」
使わしめ、クワッ。
和山社からの急ぎの知らせは、恐ろしいモノだった。化け王とは違うバケモノが、やまとに入ったと。
才を奪われた王族の血を引く、アンリエヌのバケモノたち。生き血を啜らなければ生きられない。人を含めた動物を、エサとしか考えない。
そんなバケモノが、霧雲山を目指している?
「山守神、お忘れですか。才を失ったバケモノが、どのように命を繋ぐのか。」
才を奪われ闇に潜んで、生き血を啜ることで生き長らえて。それで、えっと。そうそう。日の光で消えるのよね、バケモノって。
・・・・・・聞く限り、違うような。エッまさか、強く生まれちゃった? こわいコワイ怖いぃ。そんなの、来ないでよ!
「シズエ。私、決めました。」
「イケマセン。閉ざすのは、次の夜です。」
「そんなぁ。もし、もしよ。飛んで来たら、どうするのよぉ。」
オォヨヨ、オヨヨ。サメザメ。
「整ったか、流。」
「はい、渦風神。」
神と使わしめ。見合って、ニッコォ。
昼までに、神成山の統べる地を閉ざす。
隠の世から、全て戻ったと知らせが来た。直ぐにでも閉ざせるが、鎮の東国には今、西国の使わしめが集まっている。
白神社から出て、この地を通り過ぎるまで待とう。
なぁに、閉ざしても障り無い。畏れ山、霧雲山、神成山は結んでいる。閉ざしても、使わしめは通れる。隠の世に行けないダケのコト。
「ニャッ、ニャァ。そろそろ御手を。」
流は毛並みの良い、猫の妖怪。
「ん、ココか? それとも。」
渦風神、ニャンコ派で在らせられる。
「お、御嫁に、行けニャイぃ。」
モフもふモフゥゥ。
「申し上げます。」
火炎神の使わしめコロ、スッと平伏す。
「ウム、整ったか。」
「ハッ。」
統べる地を閉ざす。
隠の世から先、全て戻ったと知らせが来た。北隣の斑毛山、その隣の越道山。南隣の津久間、その隣の大貝山、具志古も閉ざされた。
中の東国で残るは、神成山と霧雲山。そして、畏れ山。
神成山は、西国の使いが通り過ぎるまで、待つだろう。霧雲山は、次の夜が明けるまで。
「申し上げます。南国、全て閉ざされました。」
日暮れ前、四つ国が閉ざされたと知らせが。残るは鎮の西国、中の西国、真中の七国の三国。
「畏れ山の統べる地を、今すぐ閉ざす。」
「あっ、畏れ山。」
「閉ざされましたね。」
笑顔で御するシズエ。強い!