8-23 困った時は、お互い様
人の世の神は、ノンビリなさって御出でだ。
使わしめから知らせを受けられ、『良山に御坐す大蛇神へ、言伝を』と御決め遊ばすまで、時が掛かり過ぎた。
使いが社を出たのは、昼前。大急ぎで向かったものの、四つ国に着いたのは昼過ぎ。ハイ、その通り。閉ざされてました。
隠の世は閉ざされても、妖怪の墓場は閉ざされない。保ち隠に会って話せば、通してもらえる。こうしちゃイラレナイ、急げ!
しかし、閉ざされていた。バッテンが刻まれた立て板を見て、悟る。遅かったと。隠の世が閉ざされるコトは、まぁそう珍しくナイ。しかし、妖怪の墓場は違う。
使い隠の代わりに、立て板が。そこまでのコトが、人の世で。となれば隠、妖怪も危ない。狙われるのは、生き物だけでは無い。ってコトは・・・・・・。
「ど、どうしよう。」
使わしめ、頭を抱える。
立て板に刻まれたのは、進入禁止マーク。許し札を持っていても、決して入れない。そういう膜が張られたのだ、隠の世に。
「四つ国から行けなくても、真中の七国なら。」
フラフラと立ち上がり、いざ!
西国と、四つ国の間には海。それでも閉ざした。急がねば。中の西国と真中の七国は、陸続き。真中の七国が閉ざされていれば、南国も。
中の東国は、大貝山の統べる地が閉ざされたと。
耶万で執り行われた大祓の後、開かれたハズ。もし閉ざされたままなら、鎮の東国まで行かねば。
「そう、ですよね。」
膝から崩れ、ペタン。
真中の七国、南国、中の東国、鎮の東国。どこも隠の世は固く、閉ざされていた。
アッチコッチ休みなく飛び回り、もうヘトヘト。夕暮れ、日暮れ。辺りは真っ暗。
「ここまで来たのに。」
「嘘だと言って。」
「終わった。」
西国に御坐す神の使わしめ、揃ってゲッソリ。
「ごめんください。」
西から来た使わしめたち。困り果て、社へ。
「はぁい、ただいま。」
白神の使わしめ、キョキョ。熊啄木鳥の隠である。
鎮の東国、南に広がる白神山の地。その麓に在るのが、白神社。因みに白神山には、妖怪の墓場もある。
「やまと隠の世は全て、閉ざされたようです。」
「そうか。」
隠の世を閉じる。そう聞いて驚いたが、閉ざさなければ守れないホド、強い闇が西国で。
出雲、一九社。大貝山の統べる地に御坐す神神、大蛇神を交えて毎夜。
あの議りは、この度の事に繋がっていたのか。それとも他に、何かトンデモナイ事が起きたのか。確かめようにも、確かめられない。
この地は、西国から遠く離れている。もしその禍が齎されるなら、和山社から使いが。それまでは、待つより他ない。とはいえ、このままでは気の毒。