8-18 吸血鬼、やまと上陸
アンリエヌから東へ進みつづけ、やっと得た手掛かりは二つ。『やまと』『霧雲山』 金髪に紫の目。青い衣を纏い、白い獣を従えた神がいるらしい。
「フゥ。」
夜しか動けない。とはいえ、かかったな。
「アンナさま。この地に『霧雲山』は無い、との事。」
「そうか。で、どこに在る。」
「ここより東、中の東国に在るそうです。」
人と妖怪の合いの子が、重なるように転がっていた。残らず吸われて死ぬのは、人の血が入っているから。
エド大王より『エンを連れ戻せ』と、命を受けた。
不死の才を生まれ持つ、王弟の次男。髪は金、目は紫。青い衣を纏う事が多く、犬に好かれていた。王城に残された資料は少なく、伝え聞いた情報に頼る他ない。
はじまりの一族から、全ての才を奪ったバケモノ。大王から王座まで奪い、我らを地下に追いやったバケモノ。
幾ら殺しても、殺し足りない。なのに、化け王は死なない。
王位を奪還するには、不死の才が要る。それは解るが、化け王を殺す方法を見つける方が、手っ取り早いのでは?
「にしても、何だ。下等生物しか居らんのか。」
「人の残骸はアチコチに。角を生やした生き物を見ましたが、アレは何でしょう。」
考えられるのは、伝説級の何か。あるいは魔族。はじまりの一族の他にも、尊い一族が?
いや違う。アレは呻るばかりで、獣と変わらん。血は美味かったが、それだけ。
「はじまりの一族で無いコトは、確かだ。」
「はい。」
化け王を倒すには、不死の才が要る。不死の才が有れば、どんな姿になっても死なない。日を浴びても、胸を貫かれても、骨が砕けても。
偉大なるジョド大王が、何度も何度も、繰り返し戦場に送った。深手を負っても死なず、心は脆弱だが体は丈夫。公文書に明記されていた。
一刻も早く、アンリエヌへ御戻り頂かねば。才を揮うか譲渡するか、選んで頂く。そのために!
「行くぞ、マリィ。」
「ハッ。」
「何だ、あの生き物は。」
モヤモヤっと現れた、使い蝙蝠。
「さぁ。」
「聞いた事ナイ、言の葉だった。」
プランとしたまま、仲良くパチクリ。
「『霧雲山』って。」
「言ってた。」
「お知らせしよう!」
静かに、パタパタァ。
竪羅山には、妖怪の墓場がある。隠の世は閉ざされているが、許されれば出入り出来る。
隠の世から妖怪の墓場。妖怪の墓場から、人の世へ。保ち隠は犲の妖怪、望。蝙蝠も犲も、夜の生き物。話せば分かり合える。
「望さま、大事です。」
「何が有った。」
「人の姿をした何かが、やまとに入りました。」
「解った。行け、許す。」
「ありがとうございます。」
蝙蝠とは思えない早さで、飛び去った。さすが隠!