8-15 宴会どころじゃ、ありません
杵築大社での神議り、滞る事なく終了。
宴を楽しまれる神、サッサと御帰り遊ばす神。使わしめと、出雲観光を楽しまれる神。参加賞と土産物をゲットし、御満悦の神など、イロイロ御坐す。
大蛇は急ぎ、隠の世へ。良村に飛んで帰りたい。そんな気持ちをググッと抑え、和山社へ。
良村がある良山は、マルの力で守られている。隠の世は、隠神がお守りくださる。よって闇に曝される事も、闇を感じる事も無い。
だから直ぐ、気付き為さった。ブワッと広がる闇に。大貝山の統べる地に御坐す神も、気付き為さる。
大社も一九社も、闇から守られていた。けれど他は闇、闇、闇。
出雲が在るのは、中の西国。鎮の西国が隣に在るとはいえ、これほど濃い闇が流れ込むとは。
議りの間も、闇を身近に感じた。隠神だから? いや違う。耶万から溢れた闇より、ずっと深く濃い闇が、西国で溢れたのだ。
「七日の間に齎された、全て。重い事より一つづつ、聞こう。」
和山社に戻って直ぐ、ズバッ。
出るわ出るわ。大蛇じゃなくても、頭を抱えます。
鎮の西国から『闇が溢れた』と知らせを受け、一月。中の西国から『闇が溢れた』との知らせ。二月の後、真中の七国から『闇が溢れた』と。
鎮の西国、中の西国、真中の七国。何れも、隠の世は閉じたまま。中の東国で闇が溢れたのは、耶万だけ。大祓により、祓い清められた。
四つ国と南国、鎮の東国は落ち着いている。海に守られていても、人が動けば闇も動く。よって気を引き締めて、事に当たらねば。
「鎮の西国、中の西国、真中の七国より溢れし闇。隠の世とは関わりナシ。よって捨て置く。」
人の世のコトは、人の世の神に任せる。それが蛇神、大蛇の考え。
「とはいえ、大祓の申し入れが有れば、考える。」
考えるダケ。動くとは限らない。
八百万の神が御坐すのは、人の世。隠の世は違う。隠神は一柱づつ、隠の世に御坐す。大蛇神は和山社に。治めの隠は、統べる地に。
烏神も狗神も鼠神も。狐神も熊神も鵟神も。鳶神、梟神、亀神も。他の隠神も、一柱のみ。
使い隠は多いが、人の世で大祓を行う事は無い。頼まれても断る。
「猫神は、まだか。」
「はい。『人の世の神が、戻られるまでは』と。」
郡山に在る隠の世。治めの隠神で在らせられる猫神は、謹厳実直。
「そうか・・・・・・。」
鎮の西国の神は、酒宴を楽しまれて御出でか。
出雲で、あの濃さ。儺国の闇は燃える水より、ドロドロのギトギト。大祓、どう為さる。
統べる地どころか、鎮の西国まるごと。三柱、九柱でも足りぬ。少なくとも八十一柱。
耶万から溢れた闇は、大貝山の統べる地が閉ざされた事により、止まった。社を三柱、統べる地を三柱、中で一柱。隠の世より三柱。十柱の御力で、何とか。
「申し上げます。」
使い隠が息を切らせ、飛び込んできた。
「猫神は、戻られたか。」
「はい。戻られて直ぐ、バタンと御倒れに。」