表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
大貝山編
528/1582

8-12 人に代わって


浅木社あさぎのやしろ。」


「おぉ、そうだ!」


「社の司、禰宜ねぎ、祝。皆、闇の力を生まれ持つ。」



社の司には、耳の穴から闇を注ぎ込み、命を奪う力。生まれた女子おんなごの一人にのみ、受け継がれる。


禰宜には物陰など、闇から闇へ移動できる力。生まれた男子おのこの一人にのみ、受け継がれる。


祝には心と体を切り離し、意のままに操る力。女だろうが男だろが、もっとも強い子に受け継がれる。



浅木神あさぎのかみに御願い申し上げ。」


大蛇神おろちのかみに、御許し頂かねば。」


「フム。」


「フム。」



和山社なぎやまのやしろにて烏神、狗神いぬがみ鼠神ねずみのかみ。三柱モグモグ会議、終了。






「どうすれば。」


頭を抱える妖怪が、一妖。


「タダの妖怪に、出来るコトなど。」


溜息をく妖怪が、一妖。



「なぁクベ。大石には、どのくらい居る。」


「朝まで生きていたのは、十八。これまで三十五の女が、命を落としました。加津には、どのくらい。」


「朝まで生きていたのは、八。これまで十三の女が、命を落とした。」


「その、生きて。まれてくると思いますか。」


「難しいだろう。」



何の子か判らない。しかし皆、はらの子に命を。生きる力を奪われているようだ。いくら食べても満たされない。そのうち食べられなくなって、水も受け付けなくなる。


食べても食べても瘦せ細り、飲んでも飲んでもカラカラに渇く。骨と皮になっても、腹だけはブクッと膨れ、グニグニと動く。



「死んだ十三の子、その中の一人がな。親が死んで直ぐ、腹を食い破って出てきた。」


「えっ!」


「驚くのは早いぞ、クベ。」



産屋うぶやの中から、女たちが叫びながら出てきたんだ。『どうした』って聞いたら、泣きながら指を指して、ガタガタ震えて話にならない。中に飛び込んで直ぐ、動けなくなったよ。



その生き物は、ひたいから角を生やしていた。


母のむくろを、骨ごとバリバリと。頭だけで体が無かったから、直ぐ動かなくなった。けど死んだか、なんて分からない。だから掴んで持ち出して、潰して焼いた。



気の毒だと思う。けどオレは『加津を守る』と決めたんだ。だから、手を抜かなかった。



「骸を、食らった?」


クベの目が、『嘘であってくれ』と訴える。


「そうだ。」


返答を聞き、泣き出しそうな顔に。






「生まれてくる子に罪は無い。けど、生まれる前に母を。そんな子が育って、幸せに暮らせると思うか?」


「それは・・・・・・。」



生まれてくる子が皆、同じとは限らない。人を襲って食らうかも。そう考えると恐ろしくて、叫びそうになる。けどオレたち二人とも、妖怪になった。


妖怪に生まれ変わったのは、妖怪にしか出来ない何かを、人に代わって為すため。そう、考えられないか?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ