8-9 他力本願もホドホドに
「聞きたくない、聞きたくない、聞きたくないぃ。」
夜着に包まり、山守神。ブルブル。
「シッカリなさいませ。」
「だってシズエ、皆さま仰るの。『流山を、御取り遊ばしたトカ』って。」
「『御譲りくださったの。オホホ』とでも、仰れば。」
「そんなコトぉ。」
オォヨヨ、オヨヨ。
ある日、大貝神と山守神。流山の地について議られ、御決め遊ばす。流山の地を、霧雲山の統べる地に加えると。
真であれば、大社の大札が用いられた。と、いうコト。
神の、神による、神のための結び。そのような大事を、なぜ。流山に何か有るのか。
にこやかにグイグイきなさる神神に、山守神。にこやかにサササと躱され、御籠り遊ばした。
「甘い物は、いかが?」
「・・・・・・頂くわ。」
出雲名物『神在団子』。神神にも大好評。
「流山?」
「長瀬山の事ですよ。」
「あぁ確か、水豊神の。」
「御隠れ遊ばし、幾年。」
神様も、噂話が御好き?
「闇など溢れても、直ぐに清めれば。」
「そうそう。」
「流山は霧雲山の統べる地に、近かったな。」
「闇を投げ込まれる前に、か。」
「巧みですなぁ。」
「ほんに。」
ワッハッハ。
中らずと雖も遠からず。
「闇といえば、西国の。」
「何か?」
「粘っこいと言うか、絡みつくと言うか。」
「ホウ。」
そりゃ違います。根の国の、闇入りデスから。
「隠の世、隠神は闇に御強い。」
「務めを果たしている間に。」
「サクサクと。」
それは、どうでしょうね。
「変わった感じがしましたが。」
「生まれれば、判るコト。」
「楽しみですねぇ。」
「ほんに、ほんに。」
変わった感じがしたのは、人の子では無いから。悍ましい事により、宿った命。人の血が勝っても、見た目が違うかも。見た目は同じでも、妖怪の血が勝つかも。
生まれて直ぐ、判る。人の血が弱ければ、母の命は無い。胎を食い破って出て、骸を食らい尽くす。飢えを満たすため、次から次へ。
そんな子が多く生まれれば、里や村から生き物が消える。国が傾き、滅ぶだろう。
隠の世は閉ざされた。中から力を揮い、止めているダケ。増えるコトは無いが、消えない。それだけ。