8-8 軌道修正、なるか
鎮の西国に在る、十の大国。岐国、対国、崎国、熊国、分国、筐国、儺国、珂国、筑国、糟国。十の大王は、鎮の西国を一つに。そんな待望を抱いていた。
戦、戦、戦。奪い奪われ、奪い合い。多くの命が失われ、深い闇が広がった。あちらこちらで、人と妖怪の子が。多くが生まれて直ぐ、親を食らい尽くす。
人の血が強いか、弱いかで決まる。人の血が強ければ、人に近い姿で育つ。親が死んでも、誰かに引き取られて育つ。
人の血が弱ければ、食らい尽くす。里を滅ぼし、村を滅ぼし、何れ国を滅ぼすだろう。生きるため、生き残るために。
人の世の神は、良くも悪くもオットリ。隠の世の神は守るため、出来る限り備え、整える。よって人の世は、ただ流されるまま。隠の世は直ぐ動き、禍の芽を摘む。
耶万と同じ事が、鎮の西国で起きたら・・・・・・。間違い無く闇に飲まれる。人が死に絶え、妖怪の国が出来上がるだろう。
あっちこっちに話が飛び、眩暈が・・・・・・。何とか持ち直され、大貝神。クワッ。
「耶万いや、大貝山の統べる地での事。とりあえず決まった。次に話し合うのは生まれてくる、望まれぬ子。」
軌道修正を、試みなさった。
「社で引き取る。ここまでは、良い。」
アコが戻ると御知り遊ばし、ホッと為さった耶万神。
「耶万の王か、社の司が頭を下げれば、風見は動く。と、思うのだが・・・・・・。」
風見神、ゴニョゴニョゴニョ。
「早稲は動くでしょう。人は送りませんが、食べ物は少し。」
さすが御食神! 何だカンだ言っても、早稲は豊か。村はボロッボロになりましたが、早早に持ち直しました。
早稲と風見は考えを改める。耶万の事で多くを学び、互いに仕掛けないと決め、結んだ。
業の風見、技と術の早稲。国と村だ。数では劣るが戦となれば、終いに勝つのは早稲だろう。
その早稲が耶万に手を差し伸べれば、風見も続く。動かざるを得ない。
大倉と大稲には、耶万の人が逃げ込んだ。よって出来る限り、助ける。大倉と大稲が動けば、実山も動く。実山が動けば、きっと浅木も。
風見が動かなければ、取り残される。『早稲が動いたのに、なぜ』と。風見の新しい長は、流れを読むコトに長けている。だから動く。早稲が動けば、共に。
「万十は氛冶と話し合い、要る物を多く持ち込んだ。」
「耶万の生き残りは、子が多い。親が命懸けで守り、外に出した。」
万十神、氛冶神。
「耶万から逃げ、滅んだ己の国へ戻った事で、生き残ったと。先ほど、あちらで。」
通りすがりに御聞き遊ばした、大実神。
「生き残りを一人だけ戻した事で、伝わったハズ。中の東国の奥には、恐ろしい何かが、と。」
ズバッと、海神。
「妖怪の血が強ければ、育つのも早いだろう。」
大蛇神。涼しい顔して、オソロシイ事を。
「そうなりますか。」
ポツリと、殺神。
「人の世で難しそうなら、隠の世で受け入れよう。」
大蛇神の仰せに神神、ホッ。