8-6 隠せなかった、隠し事
耶万との話し合いに向かった、社の司たち。良神と那神は、使わしめスオを御付け遊ばす。何かあってはイケナイと。
大磯川を越えて、少し進んだ辺り。人の子が倒れていた。スオは察して戻る。社の司と、行き倒れを担いで。
良那からの使いを迎えに、耶万を出たアコ。毒が回ってバタンと倒れ、動けなくなっていた。八つか九つに見えるが、十一の子である。決して死なせない!
偶偶、長が持っていた。良く効くと聞き、センから手に入れた良村の毒消し。引っ越した北の地で見つけた草を混ぜ、効き目が強くなった。そう聞いている。
良い話を全く聞かない早稲だが、稲と薬を作る術は秀でている。その早稲から出て、新しく作ったのが良村。何でも、草と薬に詳しい兄妹が居るらしい。
「フム、居るぞ。」
はじまりの隠神で在らせられる、大蛇神。ドヤ顔。
「大蛇神。なぜ良村の毒消しは、耶万の毒に効いたのでしょう。」
早稲神が、お尋ねに。
早稲神だけではナイ。風見神、殺神、海神。大貝神、津久間神、具志古神。耶万神も、なぜだろうと。
「知らぬ!」
ですよね。
「だが良山には、珍しい草が多い。」
嵓の毒を作るのに要る草花は、とても珍しい。嵓社の近くにボウボウ生えているが、他では稀にしか見つからない。その多くが、良山にも生えていた。
それだけでは無い。毒嵓の毒を消す草や、良山にしか無い草花まで。
嵓の薬人が入山したら、狂喜乱舞するコトでしょう。それくらいスゴイんです。
「少し、宜しいか。」
嵓神。出雲名物『神在団子』を持って、御出座し。
「おや嵓神。甘い物より、酒では?」
風見神、パチクリ。
「私は酒より、甘い物が。」
酒は嗜む程度で、嵒神は甘党。酒好きは使わしめ、萬です。
「先ほど耳にしたのですが、鎮の西国。中の西国、真中の七国でも、闇が溢れたとか。」
声を落として、嵓神。
「なんと!」
大蛇神を除く神神、ビックリ。
直ぐに清めて、何とかナッタ。しかし、闇を溢れさせるとは。
耶万から溢れた闇には、根の国の闇が混じっていた。西国や七国で溢れた闇には、どのようなモノが混じっているのか。
「もし根の国の闇が。いや、そのような。」
耶万神、ポツリ。
「根の国の闇が絡み、蠢くそうな。」
大蛇神の爆弾発言に、神神ポッカァン。
隠の世、和山の頂。はじまりの隠神が御坐す、和山社。愛し子マルを守るため、大蛇社と繋がっている。
つまり良山に居ても、告げ知らせが届く。隠の世を守るため、直ぐに。