8-3 羨ましいのか?
やまと人の世。アチコチにある小国を従え、大国にしようと戦を仕掛ける。里が村に、村が国に滅ぼされ、多くの命が奪われた。
今こうしている間も、奪い奪われ続けている。なんと愚かで醜いのだろう。
杵築大社に集い給うた神神。深く深く、御嘆き遊ばす。このまま捨て置けぬ。けれど神は、見守るのみ。動かぬ動けぬ。それが、人の世の神。
隠の世の神は、迷うコトなく御力を揮われれる。よって隠の世は、穏やかで和やか。戦など無い。諍いになっても、直ぐに収まる。
「・・・・・・帰りたい。」
「大蛇サマ?」
「ウタ。この議り、仲を取り持つモノであったか。」
「はい。その通りで御座います。」
良村は新しい。大人は皆、独り身。九人のうち、女は二人。コノの後ろには、兄のコタ。タケの後ろには、獣谷の里長ゲン。どちらも手強い。
そもそも良村の大人は、兄弟姉妹のようなもの。子らは分かんが、村の誰かと? 無いだろう。
シンは商い先で、誰かと。センとノリは釣り人だから、遠くの誰かと。シゲ、ムロ、タケは、他の狩り人から。カズは他の樵から。
コタは田の事で、近くの村へ行く。となると、山から出ないコノは?
「暫く、待つか。」
「・・・・・・そう、ですね。」
大蛇に育てられたウタ。推し測って、考える。
良村の誰を、誰と。それは難しい。となれば、他の里や村。それも難しい。だから、暫く待つ。そういうコトだろう、と。
「それにしても、驚きました。」
「えぇ。まさか闇堕ちした神が、戻るとは。」
堕ちてナイよ。ギリギリで留まり、耐えました。だから違います。闇堕ちすれば妖怪に。神議りにナド、出られません。
お呼びが掛かり、出席している。というコトは、国つ神なのです。言い掛かりをつけて、楽しいですか?
「まだ言うか!」
呆れ果てる、大蛇神。
「捨て置きましょう。」
冷ややかに、牙滝神。
隠神親子に睨まれると、イロイロややこしいコトに。それに気付かず、言いたい放題。
「何でも死んだ祝が、妖怪になったトカ。」
舞台俳優か。
「どのような死に方を?」
大袈裟だなぁ。ってか、ドコ見てるの。
「いや、ココでは。」
大きな声で。
「話せません。」
にしては、ノリノリ。
とってもイヤラシイ目で、耶万神を見つめ為さる。
「で、何だのだ。羨ましいのか?」
「そうでしょう。耶万を三柱。内より一柱、外より三柱。隠の世より、三柱。十柱もの神が、御力を揮われたのです。」
チラッ。
言い返せず、ギリギリ歯軋り。