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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
耶万編
516/1583

7-159 幸せになるために


耶万やまで何が起きたのか、人は知らない。けれど逃げ帰ったつわものは、震えながら言った。『耶万に手を出せば、命は無い』『神が、荒ぶられる』などナド。



鼻で笑ってドンドン送り込んでも、一人しか戻らない。戻った兵は、いつまで経ってもガタガタぶるぶる。全く使い物にナラナイ。


送る兵が居なくなって、やっと気付く。中の東国ひがしくにに仕掛ければ、殺されると。




大祓おおはらえにより、耶万から溢れた闇は消えた。多くの命が奪われたが、間引く事は出来た。けれどまた、いづれ。


生きているダケで、罪を犯すのが人。中つ国から、闇が消える事は無い。それでも神は、お守りくださる。






「耶万の皆さん。落ち着いて、聞いてください。」



中の東国、南の地。大稲おおいな、大倉、万十まと風見かぜみ実山みのやま早稲わさ。浅木、岸多きした良那らな宿儺すくな儺火なび氛冶ふや


耶万は強い村や国を選んで、人を送り込んでいた。その多くが、逃げ出した者。自ら申し出たり、仕向けて出たカンの良い、賢い者たち。


タタのように、死んでしまった者も多い。それでも、生き残りは居る。




耶万社やまのやしろから逃げ出したり、使いに出された継ぐ子たち。大祓の光を見た事で、見聞き出来るようになった。それぞれやしろで学び、耶万へ戻る事になる。



死にかけていた時、良那の使いに助けられたアコは、他の継ぐ子とは少し違う。


気が付くと、闇の力が目覚めた。力を持ってまれたが、長らく眠っていたらしい。良那社らなのやしろにおいて、国と社を分けて治めるてだてを学ぶ。




「今の耶万には、おさが居ません。だから決まるまで、万十の大臣おおおみが治め、氛冶の大臣が支えを務めます。」




万十が選ばれたのは、耶万から近い武装国家だから。しづめ西国にしくにや、真中まなか七国ななくにが攻め込んでも、守れるように。


氛冶が選ばれたのは、海に近い軍事国家だから。もし攻め込んできても、海から直ぐに向かえる。


万十も氛冶も、守るためなら手段を選ばない。しかし、侵略しない。仕掛けない。




「耶万に戻るか、この他に留まるか。良く考えて、決めてください。どちらを選んでも、社から伝えます。」



このたびの儀で殺神あやかみ風見神かぜみのかみ早稲神わさのかみ大貝神おおかいのかみ津久間神つくまのかみ具志古神ぐしこのかみ海神わだつみのかみ。鳶神、梟神、亀神。十柱、揃ってヘロヘロ。


耶万神やまのかみと使わしめマノは、病み上がり? で、動けない。なのでしばらくの間、嫌呂きろろ悪鬼おきが、耶万社で働く。


ちなみに。二妖が離れている間、畑や家の管理を担うのは、流山の狐たち。劇団コンコンの絆は、とっても強い!






耶万社にて、幹部会議が開かれた。



「蛇神の使い狐、嫌呂です。」


「同じく、悪鬼です。」


「よろしくお願いします。」


人の姿に化け、ペコリ。ケモ耳は残しました。



「万十のイツだ。よろしく頼みます。」


「氛冶のアヤだ。よろしく頼みます。」



「『社の司は、良那に居るアコ。他は話し合って、決めさせよ』とのおおせ。」


大蛇おろちからの言伝ことづてを、シッカリ伝える嫌呂。


「耶万はまれ変わります。戻ったアコが社の司として、大王をシッカリ抑えられるよう、整えましょう。」


悪鬼、高らかに宣言。






話し合いの末、耶万の生き残りを集めて、伝える事にした。任せっきりはイケナイ。



「社の者と力を合わせ、新しい耶万を作ろう。皆、幸せになるためにまれてきた。そう信じて、生きよう。」


イツが言い切る。


「オォォ!」


みんなニコニコ、笑っている。



幸せになるために、まれてきた。なんて美しい言の葉だろう。そうだ、その通りだ。



辛くて苦しくて、怖くて恐ろしくて眠れない夜。涙が涸れるまで泣いた。声が嗄れるまで、泣いた事もあった。死んでしまいたい。そう思った事も。


生きていて良かった。



死んだ者は戻らない。けれど、いつか会える。死ねば隠になって、この地に戻るのだから。きっと見守っている。そうだよね。


生きるよ。この命、尽きるまで生きる。いつか笑って会えるように、恥ずかしくないように生きよう。




お日様キラキラ、風はソヨソヨ。皆の心も、蒼天のように晴れている。



耶万編でした。大貝山編に続きます。 お楽しみに!

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