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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
耶万編
515/1586

7-158 消えてしまっても


光の柱に閉じ込められたおに、妖怪。全てはらい清められ、闇が消えた。隠の魂も、妖怪の魂も、残らず消えた。






「クベ。」


・・・・・・姉さん?


「戻りなさい、クベ。」


嫌だ。ごめん、もっと早く戻れば。


「兄さん、戻って。」


ごめん。オレ一人じゃ、戻れない。


「戻って見張るの。耶万やまの人を、これからの耶万を。」


「私たちと同じ思い、させないで。」


でもオレ、死んだよ。隠になって戻ったけど、妖怪になった。ほら、ひたいに角が生えて・・・・・・ない?


「確かにクベは妖怪よ。角はね、消えたの。耶万の闇と共に、消えたのよ。」


「だから兄さん、戻って。大石を守って。」


・・・・・・大石を、守る?


「そう、守るの。国は滅んだけど、人は生きている。」


「隠には守れなくても、妖怪になら守れる。」



そう、なのか? そう、かもな。隠の時は、隠や妖怪に触れるダケで疲れた。妖怪になってからは、疲れなかった。


そうか、妖怪なら守れる。


滅んで耶万に入ったけど、大石は残った。耶万にも居た良い人、戻った時に居なかった。きっと逃げたんだ。他の地へ、逃げ出したんだ。



神は御坐おわす。あの光、神の力だ。だから御坐す。だから生きてる、生き残ってる。そう信じて、戻ろう。戻って守るよ、大石を。



「私たち、ずっと遠くから見守ってる。」


「兄さん、一人じゃナイよ。」


そうだね。消えてしまっても、心の中で生き続ける。忘れない、ずっとずっと、忘れないよ。






「ミカも戻って。」


ミミも行くなら、戻るよ。


「私は戻れない。」


なぜ? こうして話せる、触れられる。


「神様がね、お別れの時を、くださったの。」


お別れ?


「そう、お別れ。」


嫌だ!


「私の心は、首飾りに。」


えっ。


「ミカ、加津を守って。首飾りを持って、ね。」



ミミの魂は、加津に戻ったんだね。だから今、こうして話せる。けど、もう会えないんだね。


オレ、戻るよ。離れていても共に。いつか生まれ変われたら、オレと契ってくれるかい?



オレは加津、クベは大石を守る。だから、いや違うな。ミミ、好きだ。大好きだ。神に御許し頂けるまで、加津で生きるよ。妖怪として。



「待ってる、いつまでも。忘れないでね、ミカ。」


忘れないよ。


「ミカ、大好き。」


大好きだよ、ミミ。




キラキラ輝きながら、三つの魂が旅立った。






「これから耶万、どうなるんだろう。」


早稲わさ風見かぜみ万十まととかイロイロ。出されたヤツが戻るさ。」


「逆らったヤツなら、任せられるな。」




ミカとクベは願う。皆が幸せに暮らせる、笑って暮らせる。そんな国に、と。


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