7-156 タヤ、生きて
再び、黄泉湖へ。水筋を辿り、大貝社の近くまで。
「土、聞こえるか。」
・・・・・・? キョロキョロ。
「頭の中へ、直に話して居る。」
そんなコトって。・・・・・・隠神!
「そうだ。落ち着いて聞け。」
フムフム、なるほどナルホド。解りました。土、掘りまぁす。ピョン! かぁらぁのぉ、ズサズサズサァァ。
ドドッ、ドドドドドッバァァン。
大貝社の隣に、泉が湧きました。噴き出した水の上で土、喜びの舞? ・・・・・・違うようです。
おや。風に乗り、飛び上がりました。良かった良かった。
「大貝神、蛇の光です。どうぞっ!」
テイッと振った尻の先には、大きな糸袋。宙を舞い、ガバッとオープン。飛び出した光が、大貝神の御元へ。
「オォ~!」
心と体に染み渡るぅ。
グワンと気が揺れた。大貝社から、統べる地に広がる。耶万を囲む三柱、統べる地を囲む三柱。六柱にも行き渡り、勢い付く。
「ギャァァッ。」
タヤと念珠の目から、赤黒い涙が流れた。
「念珠、念珠。シッカリして、念珠。」
バタッと倒れ、動かない。
念珠は若い妖怪。人に譬えるなら、五歳前後。
通常なら三柱で行われる儀に、九柱も。そのような儀に、若い妖怪が耐えられるワケが無い。況して体の小さな蛇など、言わずもがな。
「念珠、お願い。目を開けて!」
「・・・・・・た、や。い、きて。」
グタッ。
「嫌ぁぁ。念珠、念珠ぅぅぅ。」
タヤの腕の中で、透けてゆく。
耶万ドコロでは無い。タヤは急いで、闇を念珠に注ぎ込む。『生きて』と呟きながら、ドクドク注ぎ続けた。
「・・・・・・い、け、ない。」
「念珠! 良かった。」
少しづつ狭まりながら、輝きを増す。念珠は悟る。大祓の儀により、耶万から闇が消えると。
光の柱に閉じ込められたら、隠でも妖怪でも同じ。跡形もなく消える。タヤも念珠も妖怪だが、タヤは他の妖怪とは違う。
元、祝。清めの力を生まれ持ち、妖怪になっても力を保った。タヤなら、タヤだけは助かるかも。
「タ、ヤ。やまの、かみに、ねがい、で、よう。」
「念珠?」
「タヤ、から、うばった、のは、おと、した。かみは、ね、タヤ。」
キィィィィィン。ズズズズズ。
光の壁がドンドン迫る。断末魔の叫びが響き、引き抜かれた闇が清められてゆく。
「念珠、ココにいて。」
優しく微笑み、社へ向かう。
「タヤ、生、きて。おね、がい、だよ。」