7-155 緊急事態
光の柱に流れ込んだ闇は深く、清めても清めても追いつかない。それでも腐らず諦めず、力を揮う。
社には、信じて待つ使わしめが。難しい事だと解っていて、送り出してくれた。決して裏切れない。
「事ですね。」
天照大御神の御社にて、武御雷神。
「天つ国も根の国も、中つ国へ手出しせぬ。見守るのみ。」
「はい。」
「事ですね。」
伊弉冉尊。万が一に備え、黄泉平坂を御閉じ遊ばす。
「宜しいのでしょうか。」
控えめに伺う、使わしめ。
「良いのです。閉じたのは坂だけ、他はそのまま。」
「三日三晩、持つのでしょうか。」
「持たせるでしょう。」
「戻った。変わりは。」
蛇神、大蛇。黄泉湖から急ぎ、戻りました。
「隠の世は清らで、穏やかです。人の世は少し、歪みました。」
「柱に、ヒビでも?」
「いいえ。濁りました。」
大貝山の統べる地を囲み、儀を行う三柱。
津久間神、具志古神、海神。みなさま、強い力を御持ちだ。
耶万を囲み、儀を行う三柱。
殺神、風見神は軍神。早稲神は御饌津神。バラバラだが祀られ、守る地が近い。曝され続けた事で、闇に強く御成り遊ばす。
六柱とも御強い。しかし、どうしたものか。
耶万の罪人からは、ドンドン闇が湧き出る。幾ら搾り取っても、底無し。それだけ罪を重ねた、というコト。
ぶら下げた餌に群がる妖怪。隠を食らえば食らうほど、額の角が伸びる。
「剝ぎ取った大王どもの魂、この手にある限り、闇は深まる。妖怪の角が伸びる。」
苦しみながらタヤ。
「そうさ。伸びて伸びて、コイツらを貫く。」
タヤに寄り添い、微笑む念珠。
ピキッ。
「申し上げます。大祓、二日め夜。光の柱に、ヒビが入りました。」
使い梟が飛び込み、平伏す。
「して。」
「大貝神が、膝を折られました。」
・・・・・・マズイ。
今、大貝山の統べる地が開けば、闇がバッと広がる。大祓が終わるまで、何が何でも閉ざし続けなければ。確か使わしめ、地蜘蛛の妖怪だったな。
「ヒビは隠の三柱が、直されました。しかし、何れまた。」
「申し上げます。光の柱に、闇が広がりました。」
使い鳶が飛び込み、平伏す。
「なっ!」
隠の世も人の世も、中つ国に在る。二つの世は隣り合っている。もし人の世で、いや違う。直ぐに行かねば。
「もし気触れても騒ぐな。良いな。」
「はい。」