7-152 御任せください
「グハッ。」
天つ神は押さえ、禍つ神は支え。中つ神は戦う。三日三晩、休まず戦い続ける。崇めてくれる人たちは、使わしめに。社は、隠に任せて。
思っていたより、ずっと濃い。根の国のモノが混じっているとは、聞いていた。しかし何だ、この闇は。ジトッとネトッと、ベタァァと。
流れ込む思いが、胸を貫く。なぜ人は傷つけるのだろう。なぜ人は奪うのだろう。なぜ人は弄ぶのだろう。なぜ、なぜ、なぜ、なぜ。
これだけの闇を蓄えて、染まらず生きた妖怪。タヤは良い祝だった。皆の幸せを願い、寄り添い、力を尽くした。悪い事は悪いと言い、懇懇と諭す。
タヤには解らなかった。戦を繰り返し、国を広げる王の考えが。諫めるどころか焚きつける、臣たちの考えが。力を持つ者が望み、喜ぶ事しか言わぬ、社の者の考えが。
あの日。女として殺され、人として殺され、隠にならず妖怪に。一度でも憎しみを抱けば、ずっと消えない。時が流れ、傷が塞がっても消えない。それが憎しみ。
「・・・・・・神、耶万神は!」
マノが叫ぶ。
耶万から溢れた闇に蝕まれ、動けなくなった。耶万神は『放つ』と仰せに。なのに嫌だと言って、巻き付いた。少しでも多く、闇を吸い取ろうと。
「落ち着きなさい。」
「今は、己の事を。」
「神の御事は、神に御任せしよう。」
目を見開き、ボロボロになりながら闇と戦う、マノを救うために。
「・・・・・・皆さま。」
良い蛇だとは思えない。闇を纏ってトコロ構わず、禍を撒き散らしていた。蛇の集まりだって、何も言わずに出なかったコトも。
『神の御事は、神に』か。
使わしめが居るんだ。儺火神、岸多神、万十神では無い。耶万に力を御貸しくださる、そのような神が御坐すとすれば。
・・・・・・早稲神、風見神。
大祓には三柱。もう一柱は、沼田神? いや違う。この感じ、軍神。禍津日神で在らせられる。殺神だ!
耶万社を囲む殺神、風見神、早稲神の三柱。私を囲む朱、永良部、斎の三蛇。なんと幸せな事だろう。
「ヴヴッ!」
神の御目から御耳から、御口からも、血?
「大貝神! 御気を確かに。」
使わしめ、オロオロ。
大貝山の統べる地を囲む、具志古神、津久間神、海神の三柱。大貝神を清める気で、いらっしゃる?
耶万を囲う三柱、側に三蛇。隠の世より三柱。六柱三蛇がかりで、闇と戦って御出でだ。
もし今、耶万の闇が暴れ出せば・・・・・・。終わる。
大貝神、シッカリなさいませ! 膝が笑っても膝を折っても、耐え忍んで。解りました。大貝の事は、御任せを。
「つ、土?」
とっても良い笑顔を向ける使わしめに神、キョトン。
「思うまま、御力を揮い為さいませ。」
ニッコォ。