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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
耶万編
508/1585

7-151 負けない、諦めない


「なっ、にが。」


物凄い勢いで、闇が抜けてゆく。


「ま、さか。」


この感じ。清めだ。



逃げようにも逃げられない。一山いちのやまから掘り進めた穴は、残らず塞がれた。ただの妖怪では無い。使わしめ、それも地蜘蛛の大妖怪に。


袋状の糸がビタッと貼り付き、剥がせない。そのうえ、詰められている。グルグル丸めて突っ込まれた、蜘蛛の糸が。



「ね、ず。」


いつも側にいてくれた、いとしい念珠ねず。あなただけでも、逃げて。


「タヤ! 諦めないで。」


闇を取り込めるだけ、取り込んだんだ。こんな光なんて、飲み込んでしまえ!



「諦めないよ。」


「そう、ね。しっかり、しな、きゃ。」






見た事は無い。けれど、聞いた事は有る。大祓おおはらえ、神の儀。あまつ国、中つ国、根の国。真っ直ぐ伸びる光の柱。取り込まれれば、決して外へ出られない。



天つ国と根の国の神には何を、どうしたってかなわない。中つ国の神なら、飲み込める。だって三柱みはしら


・・・・・・いいえ、もう三柱。おにときと人の世。どちらからも? フフッ。でも負けない、諦めない。






「グッ。」


「ヴッ。」



闇が、深く濃い闇が絡みつく。何だコレは。そうだ、根の国の闇だ。






「ミカ、クベ。大王おおきみ大臣おおおみやしろの司、めかんなぎおかんなぎ。纏めて、搾り取るわよ。」


「は、い。タヤ、さま。」


おおせ、の、まま、に。」



フラフラ歩いて、ゾロゾロ連れて来た。


ミカもクベも他の妖怪よりは闇に強いが、とても辛い。思ったより闇が濃いダケ。そう己に言い聞かせ、動く。



「ダズゲデェ。」


「ユルジデェ。」


「ジナゼデェ。」



死んで、いや殺されて隠になった。妖怪に食われても、なぜか戻る。幾度いくたびも戻る、繰り返し戻る。


痛みも苦しみも、全く消えない。ズンズン積まれ、ドンドン増える。それでも死ねない。


やっと解った。


多くのおみや民を、物のように使い捨てた。多くの女を弄び、壊し、奴婢ぬひにした。珍しい毒、いくさの具。他にもイロイロ手に入れて、耶万やまを強く大きく。



その末が、コレ。ざまぁナイなぁ。



前の大王、その前の大王、その前の大王。その前の大王も殺された。せがれも死んだ、殺された。


残ったのは何だ、何が残った。・・・・・・何も。言われるまま、求められるまま奪い奪って、こうなった。



「ギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」



耶万に囚われた隠、妖怪。残らず搾り取られ、スッと消えた。骨も残らず、スッと消えた。


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