7-147 断末魔の叫び
「さぁて、お次は。」
大王の館を見つめ、ニッコリ。
「生き残ってるね。」
念珠もニッコリ。
ミカもクベも、動けなかった。怖すぎて息も出来ない。死んでも感じる恐ろしさに、膝が笑った。
「ねぇ、アナタたち。大王の首、欲しくなぁい?」
言の葉なんて出ない。けれど、激しく頷いた。
「いらっしゃい。共に、奪い尽くしましょう。」
そうだ、あの建物には大王が。大臣も。スンナリ死ねると思うなよ。苦しめて苦しめて、生まれたコトを悔いさせる。
耶万が戦なんぞ仕掛けなければ、加津の誰も、死ななかった。大石の誰も、死ななかった。蛇谷も千砂も会岐も、どこも!
死んだ者は戻らない。食われた隠も、角を生やしたのも戻らない。耶万に居る全て、ずっと苦しみ続けるんだ。それでもオレは、この手で。
「だ、誰か。誰か居ないのか。」
耶万の大王は、急に恐ろしくなった。
「お逃げ、くだ、さ・・・・・・い。」
バタッ。
ヌヒョッと黒いモヤモヤが、骸から抜け出した。良く見ると、他にもウジャウジャしている。
「ヒィィ!」
転げながら外へ飛び出そうとして、捕まった。
「はっ離せ、奴婢! ワシに触れるなっ。」
ミカとクベの二人がかりで、ドンと捻じ伏せる。
「そのままシッカリ、押さえてネ。」
ベリッ! ベリベリッ、ベリィィ。
「フギャァァァァァァァァァァァァァァ。」
生きたまま魂を剥がされ、泡を吹いた。大王の叫び声は、外に居た妖怪を引き寄せる。ボタボタ涎を垂らしながら、フラリフラリと、やってくる。
ブクブク太った骸にガブリ。飢えた妖怪が齧り付き、ブチブチもしゃもしゃ。千切られ食い破られ、骨を折られ、嚙み砕かれる。その度に泡を吹く。
繰り返し、繰り返し食い殺される。なのに死ねない。
「ごろぜぇぇぇ。ごろじでぐれぇぇぇ。」
大王、大臣、その他イロイロ。揃って叫ぶ。殺せと叫ぶ。殺してくれと叫ぶ。叫んで叫んで、泡を吹く。暫くすると、また叫ぶ。その繰り返し。
ちっとも気が晴れない。こんな男の所為で、ミミは死んだ。こんな男に穢されて、ミミは。他の娘たちも、酷い扱いを。
幾ら殺しても、殺し足りない。幾度も幾度も、繰り返し繰り返し殺しても、殺し足りないんだ!
コイツらは奪いすぎた。殺しすぎた、死なせすぎた。命は一つ。一つしかナイんだ。なのに、なのに、なのにコイツらは!
ミカとクベの額から、ニョキッと角が生えた。シュッと歯が伸び、牙になった。そして・・・・・・。
「フギャァァァァァァァァァァァァァァ。」
ガクッ、ブクブク。・・・・・・ハッ!
「ごっ、ごろじでぐれぇぇぇぇぇぇぇぇ。」
ガクッ、ブクブク。・・・・・・ヒィィ!