7-146 死ねない苦しみ
「まだ戻らぬのか! 誰か、誰か居らんのか。」
クッ、ククク。
「気付けよ、大王。」
ミカは墓へ行き、ミミを探した。今の耶万では、隠は食われる。生きていたミミは守れなかったが、残った魂だけは守りたい。
「ミミ! ミカだ。迎えに来たよ。出てきておくれ。」
探しても、叫んで呼んでも、見つからなかった。
すまないミミ。必ず、敵を討つよ。見守っておくれ。オレも死んだケドな、諦めない。きっと会えるから、待っていて。
「ヴォォォ。」
ダラァァ、ポタポタ。
「ギャァァ。」
ドロォォ、ボタボタ。
みんな、ごめんよ。もっと早く戻っていれば、そんな姿には・・・・・・。オレに力が有ればなぁ。
「クベ?」
「ミカさん!」
妹や姉さん、見つかったようだね。
オレたちには、救えない。額から角が生えている。人の形をした、モヤを食らう妖怪に。
オレたち今まで、何をして居たんだろう。耶万のを殺せれば、それで良かったのに。オレも悔しいが、クベ。間に合わなかったんだな。『諦めろ』なんて、言えないよ。
グワンッ、ガタッ、ガタガタ。ドコドコ、グシャッ。
地が揺れた、いや違う。家が倒れたり、甕が割れてナイ。でも揺れた。
・・・・・・ん。
オカシイ、苦しいなんて。オレは死んだ。息が苦しい? 体が重い? そんなコトあるワケない。
「ワァァ! たっ、助けてくれぇぇ。」
バタバタしながら、タクが社から飛び出した。
「お、まえ。社の司、社の司だよな。良かった。オレの妹と姉さん、清めてくれ。頼むよ。」
「オレに、そんな力は無い。」
そう、無い。見えない物は見えるが、祝の力は無い。
オレ、何のために。何でオレ、生き残ったんだろう。死んだけど、耶万に戻れた。戻れて会えた。
幸せな事だと思う。ごめん、ごめんよ。守りたいのに、救いたいのに何も出来ない。ごめん、ごめんよ。
シュヴァァァ。ドサッ、ゴロン。
タヤにより、タクの頭が切り落とされた。いや、刎ねられた。
他の妖怪に奪われたなら、耐えられない痛みが続く。けれどタヤには、祝の力が有る。
死んだのに、殺されたのに、痛みを感じなかった。頭と体が離れたのに、見える。聞こえる。殺された時は痛くなかったのに、痛い!
「ハァァ、フフッ。もう少し、もう少しで満ちる。」
隠になったタクを千切り、念珠に与える。残りに齧り付き、ニコリ。
「ガァァァァァァァ。」
千切られ、食い破られ、骨を折られ、嚙み砕かれる。
痛いイタイ痛いイタイ、痛いイタイ痛いイタイィィ!