7-145 地獄の一丁目
酷い言われようですね、動きましたよ!
釜戸山で闇に放り込まれ、目をひん剥き、耳を押さえながら『スイマセン。ごめんなさい。もう、しません。許してください。助けてください。お願いします!』と叫んだ、隠の守が。
大蛇とコッコに灸を据えられ、キチンと仰せに従いました。
霧雲山の統べる地を守るため、人の守を嗾け、統べる地の長に据えましたヨ。
「南の兵が、霧雲山の統べる地を目指し、鳥の川に入った。」
立ち直った? 隠の守。ズバッと切り出す。
「先見と先読の力を持つ守によれば、早稲と風見が四つ。逃した二つ、我らが仕留める。」
・・・・・・。
「我らが仕留める。」
・・・・・・。
「我らが仕留めねば、滅ぶぞ。」
隠神様が仰った。蛇神様が御決め遊ばしたと。隠の世が動く。人の世は、誰が守る。
国つ神は、お守りくださる。御力を揮われる事は無い。霧雲山の統べる地は、山守神が。霧雲山は、祝辺の守が。
我らは隠。何が有っても何が起こっても、どんな姿になっても隠は隠。死んでも祝の力を失わず、こうして守を務めるのは、なぜだ。
力を揮わず、霧雲山に籠るため。いいや違う。霧雲山で暮らす、全てを守るため。いいや違う。霧雲山の統べる地で暮らす、全てを守るためだ。他に有るか!
「これより、迷いの森へ飛ぶ。南の兵一人残らず、大貝山の統べる地に投げ込む!」
・・・・・・えっ。
「投げ入れる。」
・・・・・・いや、そういうコトでは。
「投げ捨てる。」
・・・・・・はい、そうですね。
海神は、海を御閉じ遊ばした。耶万から溢れた闇は、大貝山の統べる地の外へは、漏れぬ。閉じ込められ、国つ神により清められる。
次から次へ乗り入れる舟は導かれ、耶万の闇へ。
主を失った舟は沈められ、魚の家となる。よって我らの、この度の務めは一つ。南の兵を、耶万へ送る。他に無い。
「霧雲山は人の守と、祝辺に眠る隠に任せる。隠の守は残らず、迷いの森へ。」
オシオキされた守、マホ。目がイッチャッてます。
「皆、従おう。宜しいな。」
初代、祝辺の守。二コリ。
「はい。」
ひとつ守の仰せなら、従いましょう。と、いうコトでしょうか。皆さま。
迷いの森に到着。暫くして、南の兵を乗せた舟が二隻。スッと暗くなり、音が消えた。
送り込まれた隠の守たちが、南の舟を囲む。重さを変え、兵の動きを止める。風を操り、兵を刻んだ。
魂を集め、詰め込み、シッカリ閉じる。毒や戦の具を吸い寄せて分け、残りは焼べた。
隠となった兵を詰め込んだ甕を、耶万へ投げ捨てれば終わり。繰り返し、繰り返し、妖怪に食われる。
乗った舟、入った川は違っても、行き着くトコロは同じ。一人残らず、妖怪の腹の中へ。