4-4 二人の長
シオは決めた。誰かを向かわせるのではなく、自ら迎えに行き、話そうと。
稲田のコウ。きっと、ジロの孫だ。草谷か、川田の狩り人と来るはず。
『しばらく預かる』と言っても、信じてもらえないだろう。
早稲の村へ行ったのは、守り長カイ、水手ナオ、茅野のヨシ。
あの三人なら、一日で罪人を捕らえる。大きな舟で行ったから、そろそろか。
狩り長ゴンには、フサと車を預けてあるが。
「アミ、出掛ける。馬をっ。」
ググッと迫った。
「行く。」
縁づいてから、かなり経つ。それでも、シオから離れようとしない。
「いや、村で待て。託された子たちを、源の泉まで迎えに行く。それだけだ、すぐ戻る。」
・・・・・・。
「ツウとコウ。二人を迎える。整えておいてくれ。」
「どれくらい預かるの。」
「さあ、わからない。罪人に裁きを受けさせ、仕置が執り行われるまで、と聞いている。」
源の泉まで、馬を走らせた。子らはまだ、来ていない。犬が、寝そべっている。
犬が立ち上がった。来たか。
男が二人。川田のゴロとタロだ。何か連れている。子だ。
「コウとツウだね。」
「はい。」
好い子だ。
「シオさま、どうされました。」
タロに聞かれ、考える。誰か、連れて来ればよかったか。
「祝より、稲田のコウとツウ、二人の子を任された。罪人に裁きを受けさせ、仕置が執り行われるまで、釣り人の村で預かる。」
「長、自らとは。有難いことです。しかし、コウは我が子も同じ。村まで、送り届けたいと思います。」
信じられないわけでは、ない。悪い話しか聞かない、早稲の罪人だ。何をするか、わからない。
「そうか、わかった。タロはどうする。」
「ワシも行きます。」
「では、行こう。子らは、馬に乗せようと思う。どうかな。」
コウとツウは顔をあわせた。
「はい。お願いします。」
ゆっくり、休みながら来た。だから、そんなに疲れていない。でも、馬で来ている。ということは、来るんだ。
ツウはシオと、コウはゴロと馬に乗っている。
「わぁ、高い。」
ツウが楽しそうに言った。実はコウも、馬に乗るのは初めて。落ち着いて見えるが、心の中では大喜びしている。
「良かったな、二人とも。」
タロは馬に乗らず、歩くことにした。
「タロ、疲れたら言えよ。」
「はい、ゴロさん。」
「じゃぁ、行こうか。」
狩り長、ゴンは考えていた。草谷のヒデの子、ヒコは七つ。日吉のゴウの子、サブは五つ。茅野のヨシの子、タツは六つ。子らに、あんな惨いことを!
ヨシは強い。ナオも強い。守り長カイは、頭で戦う。早稲の村人は、信じられない。信じてはいけない。しかし、早稲の、村外れで暮らす人たち。
他よりは良い。一日あれば捕まえる。
舟に転がしておけば、逃げられない。源の泉から釜戸社まで、草谷のヒデ、日吉のゴウが助けてくれる。
「長。罪人を乗せた舟が、鳥の谷に入ったようです。」
狩り人が知らせに来た。
「そうか。わかった。」
鋭い目をして、言った。




