表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
はじまり編
5/1529

1-5 狂おしいほど愛しい才

カーには収集の才がある。呪われた才と蔑まれ、忌み嫌われる。死んだ祖母もそうだった。


隠れるように生きていた。美しく、優しく、賢い化け王。城とは名ばかりの塔に暮らす、孤独な女王。ある日、さみしそうな目で花を愛でていた祖母に、運命の女神が微笑んだ。



一目惚れだった。引き寄せられるように近づく。抱擁の後、口づけを交わし、離れられなくなった。燃えるような恋。



曽祖父は、支配の才を持つ大王。祖父は、治癒の才がある第二王子。女王とはいえ、忌み嫌われる収集の才を持つ娘など、受け入れられない。ありえない。


当然のように周囲は反対した。けれど、若い二人は負けなかった。周囲の反対を押し切り、結婚する。


愛し、愛され、満たされる。誰から見ても、幸福な家族。大王が倒れ、皇太子の側妃が、支配の才を受け継ぐ王子を産んだ。けれど、愛し合う二人の暮らしは、変わらない。




才は受け継がれるもの。血縁から、一番早く生まれる子が、その才を受け継ぐ。選ぶことは出来ない。


祖母から収集の才を受け継いだカー。両親、兄姉。皆、冷たかった。


けれど、祖父だけは優しく、包み込むように接してくれた。愛する妻から託された孫。目に入れても痛くない、そんな溺愛ぶりだった。




争いを好む大王は、祖父を縛り、利用し続けた。治癒の才を独占したのだ。争いを好まない祖父は決断を下す。


治癒の才は、誰にも知られることなく、カーが継承した。


いつまで経っても、治癒の才を持つ子が生まれない。そのことに、王家は焦った。祖母一筋だった祖父に、落胤がいるとは考えられない。


誰も知らなかった。才は譲渡できるものだ、ということを。収集の才とはそういう才だ、ということを。




カーは、孤独だった。


忌み嫌われる才を持っているとはいえ、第五王子。母は、虐げた。即位後も続いた。それでも耐えた。しかし、もう耐えられない。


唯一、可愛がってくれた祖父は、祖母の隣で眠っている。




第一側妃は自殺した。腹に据えかねたカーが、その才を奪ったのだ。計画的に、そっと。


カーには二つ上の兄がいた。選ばれし才の一つ、水の才を持っていた。だから、なのだろうか。我が儘で、やりたい放題。母と共に弟を虐げ、楽しんでいた。だから、奪ってやった。


発狂した。才を失った側妃など、捨てられる。切り札だった第四王子から、水の才が消えた。絶望したのか、飛び降りた。王城の窓から。兄と共に。




毒母の趣味は加虐。虐げられたのは、カーだけではない。不死の才を持つエン、不老の才を持つルー。共通点は他にもあった。嫌悪感を抱いていたのだ。王族は、暴食を美徳とする。


不死の才。死なせない、というものではない。老いて死ぬまでは、死なない。そういう才だ。たとえ傷を負っても、病に倒れても死ねない。だから、最前線に送られる。


戦いに駆り出されるたび、負傷した。何度も、何度も、何度も。くりかえし、くりかえし、戦場へ。

回復するわけではない。激痛に襲われて、のた打ち回る。気絶して倒れても、放置される。後遺症が残る。


エンは言った。「呪いだ」と。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ