表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
耶万編
499/1584

7-142 指先一つで、パチリ


な、ぜだ。なぜ死ねない。舟で川に入って、上がって、それで。・・・・・・死んだ、のに。


食われた? 吸い取られた。シュルシュルと何かが、体から離れた。それで、それで。そうだ。集められて固まって、潰されて。は、き、出された。



体が重い。痛い苦しい、寒い怖い。めろ、来るな。来ないでくれ。また食われる。嚙みつかれて、引き千切られる。もう嫌だ、殺してくれ。死なせてくれよ。


あぁぁ、重い。痛い苦しい、寒い怖い。頼むから来ないでくれ、止めてくれ。食われる、食い破られる。なぜ死なない、殺されても死ねない。



神様、居るなら助けてくれよ。耶万やまに攻められて、滅びかけた。ヤツら散蒔ばらまいたんだ、毒を。水が飲めなくなった。バタバタ死んだ、殺された。



オレはな、いくさに出たくなかった。逃げられなかった。駆り出され、放り込まれたんだ。・・・・・・帰りたい。


もう許してくれ、死なせてくれ。頼む。頼むから、死なせてくれよ。






「フゥゥ、力がみなぎる。」


タヤの体に、闇が流れ込む。ドクッ、ドクッと脈打つ。


「ドンドン送り込まれるねぇ。」


念珠ねずもウットリ。



妖怪の墓場から続く横穴が、ドバッと塞がれた。掘り進める時、通ったっきり。出入りする事ナイし、無くても困らない。だから気にしない。


チョコマカしていた蜘蛛の子も、サクッと片づけた。少し逃がしてしまったケド、言の葉も使えないチビなんか、要らない。



耶万はイイね。あれだけ居たおにが、妖怪になった。狐に焼かれて減ったけど、また増えた。次から次へと、餌が運ばれてくる。


ククク。闇が渦巻いている。



苦しめ! 悶えろ! タヤを傷つけたんだ。死んだくらいで、許されると思うな。


・・・・・・あっソレ、親とか? まっ、他のに同じ事したんだし、当たり前だよな。



もっと苦しめ、もっと悶えろ。もっともっと追い詰めて、もっともっと搾り取る。人なんてイキモノ、滅んでしまえ。


クク、ククク。






「曲川、暴れ川からは来ない。」


天霧山の雲。


「南から送られたつわものは残らず、闇に消えた。」


心消こけしの影。


浜木綿はまゆふの川から入った舟、早稲わさが止めた。」


月見山のひの


「沼田から早稲の間に潜み、四つ仕留めた。残り二つ。」


天立山の月。


「闇に飲まれたが、ドコ行った?」


星海山の梟。



天霧山、弓の村。五つの忍が集まり、持ち帰ったアレコレを話し合う。



「南に潜った忍び。残らず戻ったが、起きない。」


「ウチも。」


「ウチも。」


「ウチもだ。」


「清めの力を持つのに、触れてもらえ。起きる。」


月、影、桧、梟、ビックリ。


「チョンと一突き。それで、起きる。」



糸遊の祝は、遠くを見る。沢出の祝は先読。見空の祝は、心の闇を操る。水月の祝は、水の流れを読む。矢弦(やつる)の祝は、人の心を操る。


揃って、清めの力は無い。



だから試しに、継ぐ子に頼んだ。『甘い実あげるから、ツンツンして』と。ツンで起きたよ、寝てたのが。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ