7-140 ニョロッと大集合
ニョォロ、ニョロニョロ。ニョロニョロリン。ニョロロン、シュルリ。ニョロリンコ。ニョロニョロ、ニョロロン、ニョロニョロリ。
和山社にて、蛇の集まりが開かれる。
やまと全土からニョロッと集まった、蛇の使わしめ。その数、ザッと一万。行儀よく蜷局を巻き、おしゃべり。
蛇好きにはタマラナイ! この催し。主宰蛇は海布。
殺神の使わしめ。なのに、人に興味ナシ。『滅んでしまえ』とさえ、思っています。生け贄に、されましたから。
「みなさん、こんばんは。隠の蛇、海布です。」
ニョロッ、ポンッ。人の姿に化け、拍手。
「御存じとは思いますが、耶万が闇に飲まれました。」
シュルッ。
「マノは私と同じ、隠の蛇です。少し歪んでいますが、使わしめである事に、誇りを持っています。」
耶万が闇に。その時、海布は思った。『助けたい』と。なぜだか分からない。けれど心から、そう思った。
「耶万を清めるには、三柱。大貝山の統べる地を清めるには、三柱。」
大貝神は大貝山で、統べる地を押さえ為さる。よって津久間神、具志古神、海神が御力を。
隠の世からは鳶神、梟神、亀神が御力を。耶万を清めるため風見神、早稲神、殺神が御力を。
中つ国。隠の世、三柱。人の世、六柱。耶万と大貝の地を清め、守るために御力を揮い為さる。
「神神が御力を揮われる事で、耶万神は清らに。しかしマノは、闇に囚われたまま。」
耶万から溢れた闇には、根の国の闇が。救うには、使わしめの力が三つ。
殺神が御力を揮われる間、社を離れられません。なので私には、加わる事が・・・・・・。
『何を』と、思われるでしょう。けれど、どうにも為らぬのです。
「皆さま。どうか御力を。」
「海布さま。少し、宜しいか。」
万十神の使わしめ、斎が問う。
「はい。」
「もし。その時は、どう為さる。」
根の国の闇は深く、濃い。清められなければ、闇に飲まれる。使わしめが闇堕ちすれば、神までも。
マノさまの事は、気の毒に思う。だからと言って、力添えしようとは・・・・・・。
「神の御為ならば、どのような事でも。禍を齎すような事は、決して受け入れられません。」
耶万神は、隠神で在らせられる。マノさまも隠。隠は何があっても隠。耶万神は闇堕ち為さっても、妖怪に御成り遊ばすだけ。社から離れる事になっても、共に。
時は掛かるでしょう。けれどマノさまなら、どんな事になっても戻られる。
「そうでしょうね。けれど私は、力を尽くしましょう。」
儺火神の使わしめ、朱。
「私も、力を尽くしましょう。」
岸多神の使わしめ、永良部。
「では、私も。けれど朱さま、宜しいのか。」
斎が、控えめに尋ねた。
「はい。儺火神より、御許し頂きました。」