7-139 何と
「申し上げます。」
大急ぎで使わしめ、ニョロッと参上。
「夕日! どうした。」
赤い蛇が真っ赤っか。体から湯気を立てている。
「南の兵が、川を上がりました。大磯川と椎の川を進んだ兵。二人を残し隠となり、妖怪に食われました。」
「なっ! なぜ、そのようなコトに。」
・・・・・・まぁ、そうなるよねぇ。にしても耶万の闇、怖いコワイ恐ろしい。
食らった人を隠にして、妖怪に食わせる。消さずに戻して、また食わせる。繰り返し食われた隠が、妖怪に?
ナニソレ。コワすぎて泣く。
「夕日、違っていて欲しいのだが。」
「浜木綿の川からも、六つ。」
・・・・・・。
「岸多より、永良部さまが。」
岸多神の使わしめ、永良部。永良部海蛇の妖怪で、猛毒使い。温和な性格で、『使わしめ蛇の会』では、幹事を務める。
「で、何と。」
「はじまりの隠神で在らせられる、大蛇神の御許しを得て明くる日、『和山社にて、蛇の集まりを開く』と。」
「そうか。『木の実ごろごろ』を、持って行きなさい。」
実山銘菓です。いろんなドングリを、贅沢に使った蒸し団子。美味しいヨ。
「はい。」
ニコッ。
乗り捨てられた舟に手を加え、北を目指した? 浜木綿の川から六つ。残された戦の具などを積み込み、霧雲山の統べる地へ。
・・・・・・ハァ。
岸多神から風見神、風見神から早稲神、早稲神から雲井神。となると釜戸神、矢弦神。山守神、火炎神、渦風神の御耳にも。
風見にも早稲にも、妖怪の墓場は無い。流山へ使わしめを遣り、言伝を。
戦なんぞ仕掛ければ、間違い無く荒ぶられるぞ。中の東国、真中の地には、多くの愛し子が居る。もし、その中の一人でも。
あぁ。考えただけで、眩暈が。
転んで擦り剝くダケでも、噴き出すよ。少しでも泣かせれば、押し流すよ。もし、もしも大蛇神の愛し子に。なんてコトになれば中つ国、終わる。
「実山神。こちらを、どうぞ。」
「おや、肉巻き。私は良いから夕日、おあがり。」
蛤の肉に猪の肉を巻いて焼いた、岸多の郷土料理『肉巻き』。日持ちシナイので、中の東国でしか、食べられません。
永良部からの、お土産です。美味しいヨ。
「では、共に。」
「頂こう。」
ニコッ。
「黒目、急ぎ早稲へ。言伝を頼む。」
「はい。」
「私が行きたいが、今は・・・・・・。風見から離れられぬ。」
「早稲神も、同じ御考えでしょう。実さまを、雲井社へ。」
「神輿を使いなさい。それと、これを。」
「にっ、肉巻き。宜しいのですか。」
「良い。気を付けてな。必ず、戻るのだぞ。」
「はい。行ってまいります。」
ニコッ。