7-137 物騒なコトを
クッタクタの、ボロッボロ。そんな狐が二妖、仲良くグッスリ。仰向け大の字? イエイエ。モフッと尾を抱き、眠っています。
過酷な任務を果たし一山、鳶神の社を出た。その足でフラフラと、使い隠御用達『隠の宿』へ。
目をシバシバさせながら、受付で伝えました。『蛇神の、使い狐です』『お世話になります』と。
高級宿ですから、出で湯つき。モチロン、源泉かけ流し。ソコソコ有名な温泉地、なのですヨ。起きたら出で湯、楽しんで。
大蛇は、情け深い隠です。
疲れ果て戻るだろうと、使い隠をニョロッと、コンコンに付けました。御蔭で傷を負わず、戻れました。よかったネ。
「なっ、何ですってぇぇ!」
山守神、絶叫。
「こちらへ?」
「せっ、攻めてくるわ。南の兵がぁぁ。」
シズエの九尾に、御顔をズボッ。
「使わしめの尾に、逃げ込まないでください。」
いつものコトなので、驚きません。
「鳶神は使いを、どちらへ。」
ガタガタ、ブルブル為さる神に代り、使わしめ。
「霧雲山と、良山へ。」
使い鳶も、慣れたモノ。
「ありがとうございます。」
「では、これにて。」
しっかり見送ってから、山越烏を呼んだ。そして伝える。祝辺から、人の守を連れてくるようにと。
隠の守なら烏で直ぐ。急ぐなら、隠を呼べば良い。しかし、人の守を呼んだ。待たされるのに、呼んだ。忍びを動かすために。
急ぐなら、狩り人より忍びだ。木菟も鷲の目も、祝辺の守の使い。山守の祝では動かせない。
控えめに言って、避けられている。
山守の祝は欲する。他とは違う人を集め、生け贄や人柱に。深山や白泉など、攻められた事で多くの命が。幾ら止めるよう伝えても、全く聞き入れない。
山守神は仰った。『生け贄も、人柱も要らぬ』と。それでも押し付けられ、籠ってしまわれた。それからは事あるゴトに、この通り。
「守が来るまで、ですよ。」
「ありがとう、シズエ。」
モフモフに、スリスリ。
中の東国。南を統べるのは津久間、大貝山、具志古。
津久間神は緑、大貝神は土、具志古神は風の神。人の絶望から現れ出られ、闇や禍を嫌って御出でだ。
強面で、禍津日神っぽい。けれど三柱とも、直日神で在らせられる。
共通点は他にも。津久間神は火炎神に、大貝神は山守神に、具志古神は渦風神に弱い。
中の東国。真中の三柱は、山神で在らせられる。畏れ山、霧雲山、神成山。何れも荒ぶられれば、中つ国が乱れる。
鎮の西国でも、真中の七国でも同じ。兵を送るなら敵だ。三柱が荒ぶられる前に、収めなければ。
「困ったコトに、なりましたね。」
「海神?」
「ねぇ甲。次から、沈めちゃおっか。」
・・・・・・パチクリ。