7-136 中つ国の終末?!
「タヤ。」
「・・・・・・フフッ。」
スヤスヤ眠るタヤを見つめ、念珠が微笑む。
強い怒りと悲しみを抱えながら死に、妖怪になった元、祝。愛しい愛しい、私の主さま。
人は生きるため、忘れる。少しづつ忘れて、心の傷を癒す生き物だ。隠として、穏やかに過ごせただろう。しかしタヤは、妖怪になった。
耶万を滅ぼすダケでは、足りない。
タヤを傷つけたモノは死に絶え、残るのは子や孫。孫は見逃す。子は一匹残らず締め上げ、殺した。繰り返し、繰り返し、嬲り殺した。
タヤは知らない。知らなくて良い。痛みも苦しみも悲しみも、辛い事は全て、忘れてしまえ。守るよ、ずっと側にいる。
「・・・・・・そうか。」
たった一言が、重い。
「嫌呂、悪鬼。良く知らせてくれた。」
「はい。では、これにて。」
二妖は平伏し、下がった。
耶万は滅ぶ。滅ぼされるのでは無く、廃れて滅ぶだろう。それも良い。しかし鎮の西国や、真中の七国など。他に攻め滅ぼされれば、この地は荒れる。
人の世が荒れれば、隠の世に響く。どちらも、中つ国に在るのだ。捨て置けば、闇が流れ込む。そうなる前に止めるが、こう幾度も繰り返されると。
イケナイいけない。蛇神が御怒り遊ばせば、和山が崩れる。隠の世の嶺が動けば、中つ国が割れる。動く生き物が、暮らせなくなる。
鴫山の、祝女の孫だったか。大蛇神の愛し子は幼い。早稲の生き残りに引き取られ、良山で幸せに暮らしている。そう聞いた。
大実山は良山となったが、豊かで強い。妖怪の墓場を守るのは、大実神の使わしめだった梟。放たれた隠だ。我ら隠神に従うだろう。
「鳶神。南より、また来ました。」
使い鳶がトットと近づき、ペコリ。
「フゥゥ。耶万を目指すなら、捨て置け。」
「この度は耶万を目指さず、暫く見張って居りました。気付いたのでしょう。」
乗り捨てられた舟に手を加え、北を目指して入りました。浜木綿の川から六つ。椎の川と大磯川から、三つづつ。
浜に残されていた戦の具など、選んで積み込み北へ。川を上り、霧雲山の統べる地へ。
「和山社。いや良山へ飛び、大蛇神に御伝えせよ。もう一羽は霧雲山、山守神へ。」
「はい。」
浜木綿の川は、鳥の川。椎の川と大磯川は、暴れ川に繋がっている。鳥の川を守るのは、山裾の地。
暴れ川を守るのは、獣谷の隠れ里。良村が守るのは崖の川と、その下を流れる曲川。
早稲と風見は、雲井の裁きを受けた。海から兵が上がれば、社を通じて知らせる。どちらも戦好き。声を掛け止める。くらいは、するだろう。
彼の地には、多くの愛し子が。もし。そんなコトになれば・・・・・・。中つ国は終わる。