7-135 良く描けてるなぁ
妖狐は強い。イザとなれば、狐火で焼き尽くす。そうなる前に、離れようっと。
ヲォォ。 ボッ!
ガァァ。 ボッ!
ヴゥゥ。 ボッ!
妖狐の炎は三つ。青い炎は全てを、白い炎は動かないモノを。青と白の炎は、動くモノを焼き尽くす。
社を包んでいた光が消え、耶万の人は逃げた。継ぐ子に諭され、飛び出した。残ったのは、聞き入れなかった人たち。
耶万に残った人の多くが、妖怪に殺された。隠となり食われた。どういうワケか、食われても消えない。隠のまま、繰り返し妖怪に食われる。
二妖が放ったのは、青と白の炎。消えず、食われ続けた隠。望んで妖怪になった隠など。外で動いていた全て、焼かれて消えた。
「何だ、こりゃ。」
加津のミカ。噴き出岩から川沿いを進み、橡の大木が見える辺りで死亡。隠となり、加津では無く耶万に戻った。
「どうなっている。」
大石のクベ。夜鳴泉から撤退中、ミカと合流するため、舟を飛び降りた。噴き出岩を目指すも力尽き、熊に食われて死亡。隠となり、大石では無く耶万に戻った。
頭から角を生やした人が、ウジャウジャしている。隠を捕まえては食らい、食らい、食らい。
あの姿、兵だ。鎮の西国か、真中の七国か。どうでもイイ。けどアレ、人か?
「なぁ、クベ。あの炎・・・・・・。」
「人と隠だけ焼いてる。みたい、ですね。」
見合って頷く。
「暫く、ここから。」
「そうしましょう。」
下に降りれば、あの炎で焼かれる。焼き尽くされ、骨も残らない。オレは、オレたちには、遣り残した事が有る。耶万を、ヤツらを殺す!
一山には、妖怪の墓場が無い。墓場が無ければ、隠の世に入れない。保ち隠が居ないから。
黙って入れば、良くて根の国送り。悪ければ・・・・・・。よって、許し札が要る。
この度、嫌呂と悪鬼に貸し出されたのは、『蛇神の使い』にしか扱えない札。落として失わないように、首から下げている。
特命なので、根回しバッチリ。お使い蛇により、面倒な『入山手続き』済。狐の妖相書、良く描けてるなぁ。
「流山で暮らす、良い妖怪。嫌呂です。」
「同じく。良い妖怪、悪鬼です。」
許し札を示し、ゼイゼイ。二妖ともボロボロ。
己で『良い妖怪』と言うのは、悪い妖怪である証。で、あるコトが多い。
・・・・・・ジィィ。
「蛇神の仰せに従い、耶万を調べ、戻りました。」
息を整え、申し上げる嫌呂。
「鳶神に急ぎ、取次ぎを。」
悪鬼が申し上げ、深深と頭を下げる。
「暫し、お待ちを。」
使い隠。鳶の一羽が、スッと消えた。