7-134 そりゃ、コワイよね
土は急いで巣穴へ戻り、獲物を確かめた。そして、頭を抱える。『蜘蛛と鳶じゃ、獲物の大きさが違いすぎるぅぅ!』と。
鳶は生きた動物を捕る事は少なく、小動物や魚の死骸を食らう。新鮮な肉で無く、冷たくなった肉だ!
ポンッと巨大化。ガサガサッ、ガブッ。
噛みつくのと、引きずり込むのは、お手の物。慣れない事して疲れたけれど、鳶神への供物。捕ったゾォォ!
大急ぎで大貝社へ戻り、器に盛り付け。恭しく頭を下げ、捧げる。
「これは、これは。」
使い隠、ゴクリ。鳶神への、供物ですヨ。
「鳶神へ、宜しくお伝えください。」
にこやかに、大貝神。
「はい。では、これにて。」
ニコニコ御見送り。姿が見えなくなると、へなへなペタン。
「嫌呂さん。」
「悪鬼くん。」
妖狐が二妖、耶万に入った。はい、その通り。蛇神の仰せです。モフモフ仲良く、震えています。
そりゃ、コワイよね。人の世では珍しい妖怪、ウヨウヨ。人の姿をしていますが、頭には角がニョキッ。迫力、満点。
「やみゃの神。ちゅ、ちゅきゃわしめを。」
「しょうでしゅね。」
そりゃ、オカシクなっちゃうよね。涎ダラダラの、コワイ妖怪に囲まれたらさ。泣いちゃうよ。
耶万社は、耶万の真ん中に在ります。コンッと一っ飛び。さあ、勇気を出して。
「いち、にの。」
「さんっ。」
ダァァァァァァッ!
「御免ください。蛇神の仰せにより、参りました。」
・・・・・・。
「どなたか、いらっしゃいませんか?」
「アヤシイ狐では、ございません。」
・・・・・・。見合うコンコン。
暫くして、ドタッツ。ザワザワザワァァァ。
「ヒィィィ。」
抱き合い、毛を逆立てる。
「・・・・・・あれ?」
嫌呂は気付いた。
黒いモヤモヤ。思いを残して、死んだ人の魂を取り込んだヤツだ。良山で出会した闇とは、感じが違う。ってコトは、もしかして。
「耶万神ですか? 使わしめも、いらっしゃいますか。」
ザワッ。
「モヤモヤの濃さを、確かめさせてください。」
嫌呂は悪鬼と共に、ゆっくり近づいた。
所どころ、黒くなっている。
耶万神の使わしめは、黒蛇の隠。違いが判らない。けれど蜷局の中に御坐すのは、きっと。
見合い、頷く。
考えている事は同じ。急いで耶万を離れ、一山から隠の世へ入る。使い蛇に言伝を頼み、大貝山の、妖怪の墓場で待つ。
「隠の世、隠神に御伝えします。御気を確かに。」
「お・・・・・・願い、し・・・・・・ます。」