7-133 御疑いか
「終わらせてください、土さま。」
「ん?」
「妖怪に堕ちる。それは恐ろしく強い何かを、抱えてしまった証です。」
「そうか。」
「通りましたよ。ずっと前に、傷ついた娘が。」
「なっ! ゴウ、そなた。」
保ち隠は、墓守です。大貝山の、妖怪の墓場を守る。それだけ。通り過ぎるだけなら、何も言いません。見張りますがね、シッカリと。
ここに来た時、とても楽しそうでした。人の姿に化けた蛇が、娘と手を繋いで。
伝わってきましたよ。強い怒りと、深い悲しみが。
この巣穴の奥。子蜘蛛の揺れを見る限り、耶万ですね。二妖で仲良く、掘ったのでしょう。遠くまで休み休み。出た土を盛り、入口を隠して。
「娘も蛇も戻れない。けれど、このままでは。」
「何としても、清める。」
その前に塞がねば。しかし塞いだとして、他にも。それは無い。子蜘蛛たちが、見逃すとは思えない。
「塞ぎますか、満たしますか。」
「通れなくする。」
「はい。」
巣穴に合わせて、大きさを変えてっと。こんなモンかな? カサカサッ。後ろに、下がりまぁすっ。尻をポスッ。思いっきり、ブホッ。
臭くナイよ!
うん、塞げた。プルプル、ポロッ。糸玉で蓋をして、ギュウギュウ詰める。フンッ、テイッ、トリャ。ポンポンッ。
「おぉ!」
パチパチパチ。
「こんなモンかな?」
「はい。土を被せれば、見分けがつきません。」
「そうか。塞いだか。」
「はい。」
蛇。善くないモノ、禍を齎すモノ、付き纏うモノ。深く思い込んで、忘れられないモノ。とまぁ、嫌われる。とはいえ、使わしめに蛇は多い。
「隠を食らい、力に変えるとは。」
「はい。」
禍禍しい闇が、耶万から伝わる。
神が御坐す地では、何とか。御隠れ遊ばした地は、食らい尽くされたとしか、考えられない。
あれだけ放った子蜘蛛が、少ししか残らなかった。という事は、耶万も酷い事に。確かめるには。いや、しかし。
「何を恐れる、急がねば。耶万神、闇堕ちなさるぞ。」
使い鳶、颯爽と登場。
「清めようにも、三柱では。」
耶万を三柱で囲い、清める。もう三柱で、大貝山の地を囲い、清めなければ。
耶万の闇は深い。清められなければ、闇を被る。闇堕ちする。御頼みしようにも、なかなか。
「風見神、早稲神。二柱、神囲いに加わると。」
「それは、真で。」
大貝神、ビックリ。
「鳶神を、御疑いか。」
使い隠、ギロリ。隠神を疑うなんて・・・・・・。




