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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
耶万編
484/1581

7-127 おかしいオカシイおかしいゾ


ええい、忌忌いまいましい。西国にしくに七国ななくにも、そんなに耶万やまが欲しいのか。腐るほど送り込みやがって。



耶万に残る兵は少ない。北へ送ったつわものが、新たな兵を連れ帰る筈だった。なのに、誰も戻らない。


風見かぜみから聞いた話では、戦好きが多い。少しつつけば、ガラガラ壊れる。冬に戦を仕掛け、戦う力が残って無い。確かに、そう聞いた。



騙されたのか? それは無い。


風見は賢い。耶万といくさになれば、滅ぼされると知っている。早稲わさと組んだが、耶万に牙を剥く事は無い。だから仕掛けない。



「戻せ。」


・・・・・・?


「戻せ! 北へ送った兵を、今直ぐ戻せぇぇぇ。」


「はっ、ハイ。」






耶万のおみたちが、慌てふためく。


幾ら送っても戻らない兵に、耶万の夢を多く持たせた。残りは少ない。風見から届く筈だった毒が、全く届かない。出した使いも、一人も戻らない。




見えない何かに妨げられ、遠くへ行けない。やっと気付いた時、多くの兵が押し寄せた。戦が始まった。


搔き集めた兵を向かわせ、何とか凌いでいる。しかし続かない。いつ崩れても、おかしく無い。




耶万社やまのやしろへ走った。風見にも早稲にも、社が在る。社を通して、話を付けようとした。しかし叶わない。


耶万で見えるのは社の司、一人だけ。見えるだけで、聞こえない話せない。めかんなぎにもおかんなぎにも、見えない聞こえない。よって話せない。




イライラが募り、当たり散らす。


耶万で暮らす人は皆、同じ。イライラ、ギスギス。アッチでもコッチでも大騒ぎ。目が合った、肩がブツカッタ。それが何だ、それくらい何だ。



嬰児みどりご幼子おさなごが死ぬのは、いつもの事。年寄りが死ぬのは、当たり前。若者が死ぬのはオカシイ。なぜ死んだ?



言い争って死んだ。言い負かされて死んだ。殺されるか、殺すかの違い。・・・・・・どう考えてもオカシイ。何が起こっている。


耶万の人は、血の気が多い。昔から変わらないが、死に過ぎる。兵が少なくなっている今、一人でも多く要るのに。






「北へ使いを出せ。送った兵を、残らず戻せ。」


社の司に言い付ける。


「お急ぎですか?」



何だ、この男。急いでいるに決まっている。見れば分るだろう。なのに、ヘラヘラしやがって。


・・・・・・ん、おかしい。人が少ない。もっと居ただろう、どこへ行った。どこに居る。



「社の者、全て集めろ。」


「揃っていますよ、臣。」


「っな、何ぃぃ。」



兵が足りなくなった。狩り人、釣り人も送った。それでも足りない。


覡を送った、子まで送った。まだ足りない。継ぐ子を送った、巫まで送った。で、残ったのはコレダケ。



幼子チラホラ、子はチョビッと。祝と禰宜ねぎは、元から居ない。社に逃げ込んだ人は皆、ボロボロ。北の地へ送っても、行倒れる。



「馬が有れば、行けますよ。」


フラッと立ち上がった男が二人、申し出た。


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