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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
耶万編
472/1582

7-115 死なせたくない


「シゲにも、見えるのかい?」


「ん?」


「使わしめっておにとか、妖怪だろう?」



厳樫神いつかしのかみの使わしめ八咫やたは、烏の妖怪。沢出神さわいでのかみの使わしめ岩は、熊の隠。


妖怪は、人に姿を見せられます。姿を見せられる隠は、いにしえの隠だけ。



実は岩、熊なのに狸寝入りを決め込み、動きませんでした。呆れた祝が社憑き、もやに依頼。いつもの事です。


靄は、幻術を得意とする妖狐。人に姿を見せられる。




「そうか。認められれば、オレも話せるのか。」


ノリの目が輝いている。


「そうだな。」


シゲ、苦笑い。



因みに。大蛇おろちから御土産に、良山銘菓『炒りカヤ』を手渡され、御満悦。薄皮つきで、ポテチのよう。隠にも妖怪にも、大人気。社の皆で、美味しく頂きました。


岩の分はナシ。


働かざる熊、食うからず。






良村よいむらに情報をもたらしたのは、樫と心消こけしだけでは無い。上木、ふたなりいわお楢守ならもりからも。



上木の社の司には、先見の力。祝には、風の声が聞こえる。上木の祝には代代だいだい、同じ犲の隠が憑く。このたびも、銀が知らせてくれた。


双樫ふたかしと楢守の祝には、木の声が聞こえる。嵓の祝女はふりめには、石を操る力が有る。木の力と石の力を借りて、良村まで声を届けた。受け取ったのはマル。


祝の力が無ければ、声は届かないらしい。




「嵓と大貝から、使わしめが来た。耶万やまから溢れた闇は、妖怪によって作り出されたモノだ。」



大貝山の統べる地は閉ざされ、少しづつ清められて居る。しかし闇は深く、濃くなるばかり。


耶万に攻め込まれ、死んだ人。耶万になぶられ、死んだ人。耶万の奴婢ぬひとして、死んだ人。殺され死んだ魂が闇に飲まれ、広がり続ける。



困った事に、その闇。人に憑く。耶万を出ても、離れず深くなる。幾人いくびとか霧雲山の統べる地に入ったが、清められなんだ。



「耶万の闇は、移るのでしょうか。」


思いつめた顔をして、カズ。


「移る。広がる。」


「オロチ様。」


「シゲ、その通りだ。マルなら、耶万の闇を清められる。」



清めの力を持つ祝は他にも。しかし耶万の闇を清められる、強い祝は居らぬ。


マルは我のめぐし子。祝の力を生まれ持つ、子だ。一人二人なら障り無い。今のうつわでも、耐えられる。



マルは良山よいやまを清め守る。加えて清めるとなると、多くは難しい。力を使い果たし、死ぬだろう。


心消の祝も、茅野で暮らすタエも、先読の力で見た。マルが力を使い果たし、死ぬ姿を。



二人とも、マルを死なせたくない。


繰り返し力を使い、えらび選んで導き出した答え。祝辺の守と、嵓を動かす事。それぞれ出来る限りの事を行い、大きく変わる。




「耶万の奴婢が二人、嵓の罠に掛かった。」



幻を見せる祝人はふりとと、毒を撒く祝女。力を合わせ、仕向けた。


加津のミカと、大石のクベ。二人とも偽りを信じ、耶万の兵に言う。『明くる朝、仕掛ける』と。



南の地で、大戦おおいくさが始まる。その前に、減らせるだけ減らす。闇に飲まれた魂を、一つでも多く救うために。


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