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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
耶万編
471/1583

7-114 天然モノよ


「あのな、かしから使いが来た。」


「使いって、誰だい。」


ムロがシゲに尋ねた。


厳樫神いつかしのかみの使わしめ、八咫やたさま。」


・・・・・・。


「えぇぇ!」



樫の隠れ里。厳樫社の禰宜ねぎには、弱いが先見の力が有る。その禰宜が、見たそうだ。渦の滝の下。つるばみ大木おおきと噴き出岩の間で、いくさが始まるのを。



いわおが戦い退しりぞけるが、終わらない。


ウジャウジャつわものが押し寄せて、祝の力が使われる。それを見た生き残りが、あぶくの泉へ。潜んでるのに、伝えるために。



ソイツ、耶万やまへも知らせるんだ。それで知られる。北の地には、バケモノが居る。めかんなぎともおかんなぎとも、全く違う。強い力を持つ、祝が居ると。



曲川から攻めてくるのは、嵓が仕留める。鮎川から攻めてくるのは、祝辺はふりべもりが仕留める。霧雲山の統べる地では、誰も死なない。はじめの戦では、な。



「まさか。」


嫌ぁな感じがした、カズ。


「そうだ。次の戦で、死人しびとが出る。誰かは分からない。見えなかった、そうだ。」



「なぁシゲ。泡の泉って、ドコに在るんだい?」


「ここから東の、鮎川沿い。溪川たにかわが流れ込む辺りから、少し西。川から南へ、しばらく。」


「あぁ、アレか。」


「知ってるのかい、ノリ。」



ノリコがな、吠えたんだ。舟の中でグルグル回って、行こうよって。ふちに寄せて、舟を降りた。タッと駆け出してな、ジィと見るんだ。ついてったら崖に出た。


枯れた川だよ、渦の滝まで続いていた。そこで夜を明かした。日暮れだったし、大きな魚が泳いでたから。



朝になって、鮎川を目指した。もう少しってトコで、東へ走ったんだ。で、見つけた。コポコポとな、湧いていた。泡だらけの泉さ。



温かいから、で湯だなアレ。浸かるには狭いし、ぬるい。冷えそうだったから、入らなかった。


試しに飲んだら、シュワシュワした。毒は無いぜ。シュワシュワするダケ。竹筒に汲んで、戻ったよ。



「あっ、アレか。シュワシュワするって言われて飲んだら、シュワシュワしなくてさ。」


カズが思い出した。


「そうそう。けどさ、嘘じゃ無いぜ。シュワシュワしたんだ。」




泡の泉は、炭酸泉。ノリたちが飲んだのは、天然の炭酸水です。早稲わさまで遠すぎて、二酸化炭素が抜けちゃった。


近くを探せば、あるかもヨ。アッツ熱の、出で湯。






「御使いはな、他にも。」


ニコニコしながら、シゲ。


「樫の次だから、上木かい?」


チョッピリおどけて、タケ。


「いいや、心消こけし。」


残念、ハズレ。



心消の隠れ里。沢出社さわいでのかみの祝には、先読の力が有る。その祝が見た。泡の泉から鮎川へ出て、攻めてくる兵を。



隠神おにがみに詰め寄られ、重い腰を上げた祝辺の守。平良ひらの烏に乗って、おにの守が出る。


霧雲山の統べる地に入った兵から、魂を剥がして甕にポイ。むくろは残らず妖怪が焼いて、骨も残らないンだとさ。


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