表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
耶万編
470/1583

7-113 しっかり生きよう


「その、何だ。驚いたよ。マルが泣きそうな顔して、駆けて来てさ。」


センが慌てて、切り出した。


「そうそう。バッと抱きついて、『痛くない? 苦しくない?』って。」


シンも大慌て。



ふたなり楢守ならもりいわお。三つの里が、結んだと知った。そののち、聞いたのだ。大貝山の、統べる地が堕ちたと。


神の御坐おわす地は清らだが、御隠れ遊ばした地を通れば、闇に染まると。



マルは恐ろしくなった。怖かった。闇に飲まれたら、変わってしまう。冷たい目をして、酷い事する。そんなの嫌!


良村よいむらの人みんな、とっても良い人よ。優しくて賢くて、あったかい。変わってほしくない。ずっと、ずっと、変わらないで。




「怖かったのよ。闇に飲まれて、変わるのが。」


ポツリと、コノ。


「えっと、誰が?」


「私たちよ、兄さん。」



マルは北山で、酷い扱いを受けて育った。親に捨てられ、虐げられ。そんなマルを慈しみ、育ててくれたのは、同じ囚われ人。


その人も死んだ。



閉じ込められて出られない。外に何が有るのか、知らない分からない。どうにか逃げ出して、初めて会った他所よその人がノリ。


舟に乗っけられて、とても楽しかった。このまま離れて、他所で暮らす。そう思ったのに、戻された。



辛くて苦しくて、死にたくなった。



外から来る人は、言えないような事する人ばかり。幼子おさなごでも解る。男を受け入れられるまで育てば、おのも穢される。知らない男に、弄ばれる。



孕めば逃げられない。好きでもない男の子を、命懸けで産む。産んだ子に力が無ければ、なぶられる。


子を産んで、力が出ない。使い果たしてボロボロ。それで死んだ人も、居たでしょう。



『役立たず』と罵られ、残ったむくろは足を持って、引き摺り出される。目も口も開いたまま、両の腕が横に伸びるか、頭を挟む。


外に近づけば、はっきり見える。恨めしそうな目、いろんなあざ。古い傷、新しい傷。流れて固まった血、こすれた血。



「マルは覚えている。忘れられない。みんなも、そうでしょう?」


コノに問われ、思った。その通りだと。






「マルは確かに、怯えていた。」


「オロチ様。」


「何だ、シゲ。」


「笑っていましたがマルは、その・・・・・・。」


「気に病むな。闇に飲まれていたら、清める気だった。それだけだ。」



マルには清めと守り、二つの強い力が有る。それに良山よいやまには、大実神おおみのかみが御坐す。良村には、オロチ様が御坐す。


もし闇に飲まれても、良山に入れば清められる。守られている。



良村の子は皆、親から預かった宝。気を引き締めて、しっかり生きよう。子を悲しませたり、怯えさせてはイケナイ。




「南へ行く時は、誰かと行こう。犬も連れて。」


シゲがハッキリ、言い切った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ