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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
釜戸社編
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4-1 予知とテレパシー

新章、スタート!


 重罪人には厳罰を。とはいえ、人は殺さないのが釜戸山の決まり。いくら祝でも、変えられない。


 子を嬲り殺すなど、人のすることとは思えない。釜戸山の灰が降る、釜戸社が守る人たちに、そんな悪い人。いままで一人も、いなかった。 釜戸山の祝、エイは悩む。


 ほんの少し、目を離した。その隙に攫われた、愛しい我が子。あんなに元気に走り回り、笑っていたのに。


 探して、探して、探し回って。やっと見つけた。見てしまった。変わり果てた我が子の姿を・・・・・・。


 ある日、突然、我が子を奪われた親たち。同じ目にあわせたいと、思うのではないか? 釜戸社の天才、エイが下す決断とは!


 釜戸山編、はじまります。


木菟ずく。」


「お呼びでしょうか。」


「乱雲山へ行き、祝の言の葉、聞いて参れ。」


「はい。」


木菟は夜、動く。つまり、昼は寝ている。しかし、野比の祝、タマは、お構いなし。


眠い。眠いが、木菟の務め。果たさねば。



タマには、先を見る力がある。タマの母にもあった。つまり、女にだけ、引き継がれる。


祝になるべく、育てられ、こうなった。


木菟は、祝に仕える忍び。それぞれ名を持つが、呼ばれることはない。


数が多いから、覚えられない、ということでは、ない。祝に顔を見せない、そういうもの。


社には、司と禰宜ねぎの他に、祝がいる。祝には、祝人はふりと祝女はふりめがおり、それらを束ねるのが祝。男も女もない。


代々、命が下されるのは、夕暮れ。しかし、タマが祝になってからは、昼も夜もない。


眠いものは眠い。だから眠気に襲われないよう、二人で組んで、任につくようになった。


野比は、霧雲山にある村だ。その霧雲山から乱雲山まで、一日半かかる。山を越え、谷を飛び、二人で助け合いながら進む。




「霧雲山、野比の祝より、命を受け、参りました。」


心の中で言う。すると、頭の中に、直に響いた。


「よく、来てくれました、木菟。どこか、痛めていませんか。休むなら、使いを出しましょう。」


なんという心遣い! 泣きそうになる。


「お心遣い、痛み入ります。」


休みたくても、休めない。それが木菟。


「フクさま、言の葉を。」


「そうでしたね。『釜戸山の、守り人の村へ行き、社の祝に伝えよ。稲田の子、コウとツウを、日吉ではなく、乱雲社へ使わせ』と。」


「はい。」


そうか、そういうことか。


タマさまは、御覧になったのだ。その子らがいない世を。


稲田の村から釜戸山。子が二人、生きていくなら、釜戸山より日吉山の方がいい。でも、日吉では生きられない、何か起こる?


かといって、霧雲山は遠い。子の足では、とても、とても。だから、乱雲山なのだ。



霧雲山から乱雲山、そして釜戸山へ。木菟は何も言わず、ひたすら進む。山を越え、谷を越え、助け合いながら。




釜戸山は火の山だ。モクモクと煙を吐き続けている。


釜戸社かまどのやしろは、釜戸山の頂にあるが、離れには誰も住んでいない。司と禰宜、祝人が入れかわり詰め、他は、守り人の村から通う。


祝に会うには、守り人の村を通す、そういう決まり。



「我らは霧雲山、野比の木菟。雲井の祝より、釜戸の祝へ、言の葉を預かり、参った。」


釜戸山の、守り長の家へ行き、言う。長は出ていた。




「霧雲山、野比の木菟、祝の命を受け、参りました。雲井の、祝の言の葉、お伝えします。」


「はい。」


「『稲田の子、コウとツウを、日吉ではなく、乱雲の社へ使わせ』とのこと。」


「しかと承りました。コウとツウ、二人の子を、狩り人に守らせ、乱雲山、雲井社くもいのやしろへ届けます。」


続いて、優しい声で。


「木菟、疲れたでしょう。出で湯に浸かり、休んでから戻りなさい。」


なんと、なんという心遣い。タマさま、少しでもいいので、見習って下さい。心の中で叫んだ二人。


「ありがとうございます。」




エイは、火口を見つめながら、考えていた。


日吉山ではなく、乱雲山へ。子が二人、村を出て暮らす。知る限り、どの山にも社があって、親のいない子を守り、育てている。


日吉社ひよしのやしろは小さい。子らを守り、育てるには狭い。けれど、助け合いを一番にしている。狩り人、釣り人、織り人、いろいろ。合う仕えを選び、得られる。子にとって良い山だ。


乱雲山。厚い雲に覆われ、雷が走り、人を惑わす山。雲井社、大きくはないと聞く。村は三つ。頂、社、村には日が射す、とは聞く。



子の足では、霧雲山まで行けない。育つまでは乱雲山に、そういうことか。


「これへ。」


エイは社の司、シロを呼んだ。


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