表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
耶万編
469/1581

7-112 いらしたんだ


「病持ち? って、まさか。」


コタの顔つきが変わった。


「あぁ。そのマサカだ。」


センが答える。しばらく誰も、何も言えなかった。



良村よいむらの毒消しは、あの毒にも効く。


ほんの少し吸い込んだダケで、木菟ずくが動けなくなった。そんな毒にも効くのが、良村の毒消し。



南では採れない草や花など、いろいろ使って作る。だから、なかなか手に入らない。良く効くと、口から口へ伝わった。



良那らなの人が、良村の毒消しを持って出た。という事は、毒を盛られると。


良那は大国おおくに。毒を盛るとすれば、同じ大国。考えられるのは耶万やまだけ。




「なぁセン。良那が救ったのは、耶万の子かい?」


シンが尋ねた。


「あぁ。耶万社やまのやしろの、継ぐ子らしい。」



「名をアコ。十一のの子。親無しで、ゆかりの者も居らぬ。」


「オロチ様。アコには祝の力が、眠っているのでしょうか。」


「良く分かったな、シゲ。」



その通り。とても強い、闇の力を持って生まれた。それに気付いたのが、耶万の社の司。


恐れたのだろう。酷い扱いを受けて、なんとか育った。歪んで居る。が、まことと偽りを混ぜぬ。いづれは社の司となる、良い子だ。



アコの力を恐れた社の司、タクが外へ出した。表向きは、良那の使いを迎えるため。裏ではやまいかからせ、撒き散らそうと考えた。



毒消しを飲まされ、病は癒えた。


食べられるようになり、少しづつ歩けるように。死にかけた事で、闇の力が目覚めた。はじめは戸惑ったが落ち着き、いろいろ見えるように。



アコは知らなかった。病に罹っている事も、散蒔ばらまくために放たれた事も。






「耶万に戻されるのですか。」


コノは思った。闇の力が何なのか、全く分からない。けれど良那に引き取られれば、幸せに暮らせるのではと。


「何れ戻される。それまでは、良那で暮らす。」


「そうですか。」


妹の手を握り、コタが微笑む。コノが泣きそうな顔を、していたから。



しづめのは沼田と、早稲わさの間で引き返す。そう聞いた。」


センが続ける。


「聞いたって、誰から?」


タケが問う。


「浅木のおさから。」



浅木は沼田の西南、川の西にある豊かな国。炭焼きと商いが上手い。仕掛けられれば直ぐ動き、叩きのめす。


風見かぜみ幾度いくたびか仕掛けたが、思い知った。決して勝てないと。風見だけで無く、多くの村や国から、とても恐れられている。




「あの長が言うなら、そうなんだろう。」


シゲは浅木の長と、幾度か会っている。


「もしつわものが通れば、早稲社わさのやしろから知らせが来る。」


「オロチ様。その知らせ、人ですか。」


真剣な顔をして、ムロ。


「使わしめだ。」


大蛇おろち、ドヤ顔。良村の皆、パチクリ。



「いらしたんだ。」


シンが呟いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ