7-110 きっと、きっと
サワサワ、サワァァ。サワ、サワワァァ。
「マルさま。聞こえますか、マルさま。」
双樫社の祝、ナラ。
「こんにちは、マルさま。聞こえますか。」
楢守社の祝、シュウ。
双、楢守、嵓。イロイロあったが、三つの隠れ里が結んだ。
双と楢守の祝には、木の声が聞こえる。木の力を借りる事で、話し合える。しかし、嵓には・・・・・・。
嵓には石を操り、動かす祝女が居る。因みに、岩は重くて動かせない。水に魂を溶かして、飛ばす継ぐ子も居る。どちらも、木の声なんて聞こえない。
祝に難しければ、使わしめが動く。
双樫神の使わしめ、熊の隠ドン。楢守神の使わしめ、熊の隠グゥ。
嵓神の使わしめ萬は、思いを残して死んだ魂が集まって、生まれた妖怪。
それぞれの里で考えを纏め、使わしめに託す。託された使わしめたち。隠の世、流山に在る滝に集まり、話し合う。
持ち帰り、里で話し合う。神は『長引きそうだ』と、御思い為さった。
使わしめを通して、祝の声が届くように。国つ神の御力添えにより、叶えられた。神様スゴイ。
サワサワ、サワァァ。サワ、サワワァァ。
「・・・・・・あえ?」
「双のナラです。」
「楢守のシュウです。」
気の所為じゃ無かった。
「マルです。聞こえますか?」
「はい、聞こえます。」
「私にも、はっきり。」
コロッ。コロコロッ。
「クゥン?」 アレ?
石が動いたよ、右に左に。あっ、浮いた。コレきっと、祝の力だヨ。
「うごいら。」
マルは目をパチクリさせ、石をツンツン。
「はじめまして。嵓の祝女、シナです。」
「はじめまして。良村のマルです。この仔は、マルコです。」
「キャン。」 ヨロシク。
「センさんっ。」
タッと駆け寄り、抱きついた。
「ただいま、マル。」
「いらく、なぃ? くぅしく、なぃ?」
今にも泣き出しそう。
「うん。痛くも、苦しくも無いよ。」
マルを離して、屈んだ。
「何か、あったのかい?」
大貝山の統べる地が、堕ちた。神の御坐す地は守られ、清らに。神が御隠れ遊ばした地を通れば、闇に染まる。
ナラとシナから聞いて直ぐ、マルは叫んだ。『しょんなぁ!』と。鳥の川も暴れ川も、下れば闇に近づく。襲われる。
言伝を預かると、舟寄せへ急いだ。
帰ってきたら直ぐ、抱きしめよう。きっと清められる。みんなお守り、持っている。だから帰ってくる。きっと帰ってくる。
シンは大平、ノリは陽守。タケとムロは、鳥の谷。センは少し前、海へ出掛けた。そろそろ戻るハズ。