7-108 狐の本領
悪鬼と嫌呂は『幻の国』、第三幕の打合せ。それから尾を抱き、グッスリ。モフンッ。
ここは・・・・・・流山の国、長の家。
「ミカさん、おはようございます。」
なぜ、ここに。
「おはよう、クベ。」
そうか、クベも会ったのか。まぁ良い。流山の南で、落ち合うハズだったんだ。少し早まった、それだけ。
にしても、良く生きていたな。飯田のボクは、女と子を壊す事が好き。酷く痛めつけ、従わせて喜ぶようなヤツだ。
大石はシブトイ。チョットやソットじゃ、死なない。クベは他の子より、狡賢い。生き残るために、使ったな。耶万の夢を。
「来た時も思いましたが、豊かな国ですね。流山って。」
「そうだな。で、クベ。どこまで知っている。」
どこまでって、何が。
ミカさん、知ってるでしょう。今井で作られた耶万の夢、運ぶのは大石ですよ。どこに、どのくらい運び込むか? 知ってますよ。それが何か。
そんな事より、この山。他に無いんですか。
これだけの山です。隠れ里の三つや四つ、村の二つや三つ、あるでしょう。
流山の長は、耶万の夢を気に入ったようです。戦に使いたい、出来る限り多く備えたい。そう言いましたよ、ハッキリと。
風見と早稲は、加わらない? それ、確かですか。なら暴れ川と鳥の川、使えますね。
曲川は滝が多くて、疲れるんですよ。暴れ川も鳥の川も、山を越えれば広い。
鳥の川を守るのは、釜戸山とか蔦山とかの山。
暴れ川を守るのは、三鶴とか玉置とかの国。どちらも、多いダケで戦えない。けど良村。曲川を守るアレは違う、強い。
戦う姿は見てませんが、分かります。
伊東や大石の兵と同じ。戦いに明け暮れて、生き残った男の凄み。死ぬために戦った者にしか出せないモノを、ヒシヒシと感じました。
「おはようございます。こちらを、お使いください。」
女に化けた妖狐たち、ニコリ。ポッと頬を赤らめる、ミカとクベ。
器に水差し、柔らかい布。木の器では無く、土の器か。流山で作られた物か、他から得た物か。何れにせよ、良い品だ。
顔を洗い、身なりを整える。ミカもクベも、こんなに良い扱いを受けるのは、生まれて初めて。
ふと考えた。この豊かで良い国を、耶万なんかに奪わせるのか。勝てば良いが負ければ、滅ぼされるぞ! と。
「朝餉をお持ちしました。」
女に化けた悪鬼、ニコッ。
「ありがとう。これは美味そうだ。」
ミミの美しさに比べれば、大したコト無い。なんて思いながら、ミカ。
「流山って、良い国ですね。」
食べ物、着る物。姿形、身の熟し。全てが整っている。なんてコト考えながら、クベ。
粥に葉物、焼き魚。夕餉も御馳走だったけど、朝餉もスゴイな。
何も言わず、モリモリ食べる。ウンメェェ。貝が入って無いのに、味がする。って事は、塩が有る。南で得たのか。舟も扱えるのか。
「思ったより、強いな。流山の国は。」
ミカが呟いた。