7-105 名優の熱演
劇団コンコン、流山公演。『幻の国』第二幕、始まるヨ!
座長、嫌呂。幻の国、流山の長を演じます。看板役者、悪鬼。給仕と長の側近、一妖二役。
この作品で認められ、人気俳優に? やまと演劇賞、助演男優賞。狙えるカモ!
「それは、心引かれる。」
貫禄タップリ。さすが座長。
「生まれて初めて、王の器を備えた人に出会いました。あなた様なら王、いや大王に。」
相手が狐だと知らず、ヨイショする。
「ハッハッハ、してクベ。耶万の夢。どれだけ作れる、持ち出せる。」
キタァァ! 食いついた。
『試したい』って言わないトコロは、褒めてやる。こんな国、治めてるんだ。愚かでは無い。
愚かな長といえば、飯田のボク。死んだと思うけど、どうなった。
そうだ。耶万の夢を有るだけ渡して、使わせよう。
流山は、戦に備えている。山裾の地に仕掛けて、大王に。そんな夢、見てるんだ。乗ってくる、きっと。
ニタッと笑ってクベ。懐から『耶万の夢』を取り出し、スッと差し出した。近くの臣が小さな壺に入れ、蓋をして、長の元へ。
「これが、耶万の夢か。」
壺の蓋を少し開け、中を覗く。直ぐに閉じ、言った。
「はい。」
少しくらい試せよ。
『誰でも、思い通りに出来ますよ』とか、『刺されても動く兵が、手に入りますよ』とか言ったケドさ。出されたモンが耶万の夢か、試さなけりゃ分かんないだろう?
ニッコリ笑って、クベ。心の中で毒突く。
お狐サマは、御見通し。人の子の企てなんてバレバレ。あの悪意と連んで、イロイロと。だから分かるんです。判っちゃうんデス。
『これは、乗っちゃダメ。悪いコトだヨ。みんな、気を付けて!』 客演俳優に、シッカリ目配せ。
さすが妖狐。名演技で、魅せます。
フカブカァと頭を下げ、ススッと下がる。舞台袖から楽屋へ走り、蓋が開かないようにグルグル巻き。付き狐に託し、舞台へ。
「長。」
下がった臣が戻り、囁く。
「その男、キツク縛って獄へ。」
「ハッ。」
急ぎ、下がった。
クックッ、試したのか。まぁ、そうだよな。真だと偽って、紛い物を掴ませる。なんてコトも考えられる。
だから試した。耶万の夢なのか、どうか。
早かったから、少し。暴れ出すのは朝か。そのまま獄を出て暴れる、なんてコトも。そうなりゃ、コッチのモン。
「お気に、召しましたか?」
ニッタァ。
「気に入った。」
声は変わらないが、目の色が変わった。
名優の熱演に、スッカリ騙されたクベ。言ってはイケナイ事まで、ペラペラ話す。
「流山の南に、耶万の兵が居ます。食べ物、着る物、戦の具。海を渡った花や草、実や魚、蛇の毒もタップリ。耶万の夢も、ありますよ。しっかり守ってますが、オレなら近づけます。幾ら、要りますか?」
もう、どぉにもトマラナイィ。チャン!