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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
耶万編
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7-101 国長が務まる男


「南の大国おおくにと、いくさに。」


茅野社かやののやしろ、社の司が呟く。


「信じたくない。しかし、備えなければ。」


茅野のおさが、項垂うなだれる。


「その前に、飯田の村だ。」


茅野の狩頭、ヨシが言う。



飯田には戦好きが、まだ残っている。飯田の村人は、戦嫌い。戦好きを遠ざけるため、国長くにおさには茅野の誰かを。そう考え、話し合いを始めている。


オレのカンだが、大きく外れて無いハズだ。



飯田の狩頭は若い。狩り人、釣り人、他にも。強いの若いのは、戦で死んだ。生き残ったのは子と、少しの年寄り。若いので残ったのは、長とゆかりの者。




イチが、生きていればなぁ。幼いトコも有ったが、まだ十二。あの長の子なのに、シッカリしていた。ハァァ。なんで戦なんぞ。


過ぎた事を言っても、始まらない。南との戦は、まだ始まってない。良村よいむらや隠れ里に頼りっ放しじゃ、いけない。オレたちに出来る事を、シッカリと。



でだ、どうだろう。飯田の村長をハナさん、飯田の国長をサダ。



ハナさんには飯田社いいだのやしろと、女たちが付いている。社の司が養い親。飯田の大婆さまが、後見うしろみ。家から出ないが、社の事をシッカリしている。


オカシイのは近づけない。側にいるのは女と、社の人だけ。カタさまの家は、社の近く。一人になる事は無い。


戦好きが務めるより、女。大婆さまが認めた娘だ。誰も、何も言わないだろう。



一人じゃ決められない。だから話し合う。何でも話し合って、決める。決められる。それを聞いて、何が良いのか考える。考えて出した答えを、皆に伝える。長ってのは、そういうモンだ。




サダには、祝の力が有る。目を見る事で、心の声が聞こえる。国と国との話し合いでは、必ず向かい合う。向かい合って話すから、誰もサダを騙せない。


サダは、継ぐ子として育った。十二で社を出て、長に付いた。茅野の役に立ちたいと言って、長の事を助け、支えてきた。茅野の次の長は、サダ。皆、そう思っている。



どうだい。サダの他に、国長が務まる男。思いつくかい、浮かぶかい? ツゲの子だ、釣頭のせがれだ。シッカリ者で強い。どんな流れにも怯まず、乗り越えられる。






「飯田と茅野、どちらにも良い。」


長が頷き、言う。


「確かに。」


社の司が続ける。



ハナさんには飯田社、サダには茅野社。社を通せと言っても、これまでのは聞かなかった。しかし二人なら、言わなくても社を通す。


社を通して話すんだ。戦や争いの話には、ならない。飯田の国で暮らす、皆の幸せを守る。守れる長になる。もし外れれば、社の皆が動く。止める。



飯田は戦好きを嫌い、追い出そうとした。それが叶わず、戦を起こさないと誓ったボクを、長にした。降ろそうにも、ノラリクラリ。逃げ足の速さは、親譲り。そのボクが、裁かれた。


霧雲山、しかも闇に引っ張られた。もう生きてない、死んでいる。次も縁の者、なんてコトになれば、荒れる。だから急いで、誰を就けるか争っているハズ。



「サダを呼ぼう。」


ヨシが言う。二人は大きく、頷いた。


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