7-95 浮気? 違います!
六つの村が一つになって出来た国、三鶴。四つの村が一つになって出来た国、豊田。二つの村が一つになって出来た国、飯田。三つの国は、丸ごと。
宝玉社、牙滝社、鴫山社は守られる。玉置、北山、武田の国は、大荒れ。戦好きは見捨てる。祀り、慕ってくれる人は守る。それが社。
それでも神か? 神ですが、何か。
川北と東山はボロボロ。社に逃げ込める人は、限られている。好きに振舞っていた長など、ポイ。真っ先に死ぬ。
山裾の地を奪った、耶万の兵たち。川田と馬守は諦め、日吉山と釜戸山を目指す。どちらも強い、落ちない。諦めて、岩割山へ。こちらも強い、落ちない。
で、止せば良いのに、霧雲山へ。
南から攻めて来た者は全て、一人残らず死ぬ。魂を抜かれ、根の国へ真っ逆さま。次から次へ送り込まれるが、同じ事。ホイホイ吸い込まれ、ポイポイ捨てられる。
霧雲山の統べる地は、冷える。雪が高く積り、戦どころでは無い。一度、引く。春、血の雨が降る。死ぬのは耶万。南から、攻めて来た人たち。
神成山が動くのだ。統べる地の川は、どれも大荒れ。押し流され、沈む。辿り着いても、鮎川は進めない。矢の雨が降り、息絶える。生き残りが攻めても、同じ事。
霧雲山の統べる地で、生き残った人は皆、戦嫌い。
戦好きは、残らず死んだ。守られた里や村、国。社に逃げ込んだ人たちは、食べ物を持ち込んでいた。誰も飢えず、死ななかった。
和やかに穏やかに、幸せに暮らしたい。
妨げるヤツは、悪いヤツ。戦好きなんて要らない。守るために戦う。戦を仕掛けなければ、死なない。攻めなければ死なない。
死にたくなければ、仕掛けるな。死にたくなければ、攻めるな。
「・・・・・・しゅごい。」
マルが思わず、呟いた。
「うん。スゴイ、でしょ。」
タエが血を吐く思いで、選んだ末の事。戦になれば、多くの命が奪われる。戦好きでも人。死んでほしくない。
「クゥ?」 アレェ?
この感じ、裁きだ。
シゲさんとシゲコ。コッチに向かって、歩いている。大蛇は潜った。隠の世、かな? それにしても、スゴイ闇。釜戸の裁きとは、大違い。
裁ける山は、三つ。霧雲山、乱雲山、釜戸山。
釜戸山、釜戸社は人。乱雲山、雲井社は妖怪。霧雲山、山守社と祝辺は、良く分からない。木菟も鷲の目も、谷川の狩り人も、良い人だヨ。
思うんだ。雲井社の裁きは、他とは違う。難しいコトは分かんない。ケドね。このモヤモヤは、祝の力だ。
霧雲山でも乱雲山でも、釜戸山でも無い。
この先に在るのは、飯田の村。ってコトは、始まったんだ。闇の裁きが、飯田の村で。
「どぉしたの? マルコ。むじゅかしい、顔。」
マルの膝に乗っけられ、マルコがブンブン尾を振る。それはもう、幸せそう。
「良かったネ。」
タエに撫でられ、ウットリ。