表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
耶万編
450/1583

7-93 見縊られたモンだな


壊された奴婢ぬひたちも、目を剥いた。


あんな目に遭いたくない。壊れた心と魂が、叫ぶ。『助けて、嫌だ!』ガタガタ震えながら、ボロボロ涙を流して。声にならない声で、叫ぶ。




「さぁて、聞こうか。」


ニッタァと笑う、クラ。



耶万やまに滅ぼされた国の人は皆、奴婢になった。若い男は、戦場いくさばへ。若い女は、さかり場へ。子はアチコチへ売られ、嬰児みどりごは飼われる。


生き残った年寄りが、囲っただけの建物で。何も感じず考えず、慈しむコト無く、鶏や犬を扱うように飼う。



育った子は売られる。姿形すがたかたちが整っていれば、盛り場へ。そうで無ければ、戦場へ。男は戦い、女は穢され、死ぬ。それが奴婢。国が滅ぶと、そうなる。




ミカもミミも悪く無い。


国が滅んだから、奴婢になった。加津が勝っていれば、幸せに暮らせた。耶万に負けたから、奴婢になった。いくさに負けたから、奴婢になった。それだけ。



いられたのなら、救いようがある。ミミのかたきを討つため、攫おうとした。決して許されない、受け入れられない。己で考えミカは、多くの命を奪った。


敵討ちだ、強いられたのでは無い。周りが見えず、考えが及ばず、突き進んだ。北の地が戦場になっても、血の雨が降っても構わない。どうでも良い、関わり無い。



見縊みくびられたモンだなぁ、この地も。」


裁きに出ていた、おにたちが言う。



中つ国。人のときと隠の世は、隣り合っている。近くに在り、行き来できる。つまり人の世に闇が広がれば、隠の世にも広がってしまう。


日の光が届かない、暗い所。その奥へ進めば、隠の世。隠や妖怪が和やかに暮らす、穏やかな地。



暮らしを脅かすモノなど、受け入れられない。よってアチコチ飛び回り、見つけたアレやコレ。雲井の裁きに持ち込んで、ケリを付ける。






釜戸山は、人のイザコザを収める。人と人との、話し合い。よって釜戸社かまどのやしろの裁きは、釜戸山で執り行う。釜戸社の祝が、裁く。



乱雲山は、妖怪のイザコザを収める。国と国との、話し合いも担う。よって、雲井社くもいのやしろの裁きは二つ。乱雲山で執り行う裁きと、出向いて執り行う裁き。


乱雲山では、祝が。他では、禰宜ねぎが裁く。




出向いて裁くには、ワケが有る。霧雲山の統べる地であれば、乱雲山に呼ぶ。他の山が統べる地となると、話が違ってくる。


人を呼び裁けば、北に豊かな地があると知られる。そうなれば、仕掛けて来る。攻めて来る。


いくさになれば、多くの命が奪われる。多くの人が傷つき、倒れる。それを防ぐために、出向くのだ。




雲井社の禰宜は、闇の力を生まれ持つ。


隠や妖怪の力添えで、人なら時の掛かる事も、直ぐに分かる。出向く裁きでは、禰宜が全てのせめとがを負う。



裁きが始まる前に、明らかなのだ。あかし、見た者、聞いた者。全て揃っている。


証は品、見れば分かる。見聞きし伝えるのは人、隠、妖怪。偽れば殺されるので、まことしか話せない。つまり、逃げられない。




「飯田のボクが居なくても、裁ける。揃ってるんだよ、何もかも。言え、アライザライ話せ。」


言うもんか。黙っていれば、分からない。コイツには、心の声が聞こえない。そうだろう? 禰宜サン。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ