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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
耶万編
447/1604

7-90 らしく無いって、言われるよ


「なぁカタ。オカシイと思わないか?」


「ん?」


「加津の男さ。ハナの事、誰から聞いた?」



冬のいくさが終わって、釜戸山での話し合い。裁きは作付けが終わるまで、延ばされた。おさせがれも、見張られていたハズ。終わって直ぐ、釜戸山へ送られた。


村の人は悔いた。だから、離れなかった。


男を怖がって、子でも怖がって、外へ出られなかった。だよな? 大婆さまの家で、女たちに守られていた、十一の子。そんな娘の話を、誰から聞いた。誰が話した。



村の人なら話さない。


死んだ祝人はふりと祝女はふりめも、慕われていた。その娘を傷つけるか? 深く深く傷ついた娘を、もっと傷つける。そんな人が、飯田に?




「・・・・・・そう、だな。」


確かに、シゲの言う通り。


「オレのカンだがな。南から送られた人、どっか他所よそに潜んでいる。その中からボクが選んで、飯田に入れた。」


「まっ、待ってくれ。それじゃぁ、もう。」


カタ、真っ青。




「良いカンしてるネ。はじめまして、良村よいむらの長。乱雲山、雲井社くもいのやしろ禰宜ねぎのクラです。」


「はじめまして。・・・・・・どちらに?」


社にいる人はカタ、カク、オレの三人。禰宜って事は、人。人なら見えるハズなのに、姿が見えない。


「これで、どうかな。」


ブワッと現れ、ニコッ。




改めまして。雲井の禰宜、クラです。良村の長、大当たり。狩り人のカンってのは、スゴイね。


私には闇の力。闇を纏い、見えない全てを歪める力が有る。持って生まれた。そういう子は、おにときで育つ。闇の力を持っていた隠に、育てられる。



父にも母にも、闇の力なんて無い。土の声が聞こえる祝人と、水の声が聞こえる祝女。兄と妹がいるが、闇の力を持つのは、私だけ。


妖怪に囲まれて育ったからか、他の人とは違うんだ。言の葉も『禰宜らしく無い』って、言われるよ。私の話は、これくらいで。




「南から来た人が、他所よそに潜んでいます。」


ニコッ。


「あの、クラさま。」


「何でしょう、カタさま。」



飯田に潜んでいた人は、分かっているだけで二十と四人。うち、子は九人。舟に乗れるのは、三人くらい。


子は二人で一人と考え、五人としましょう。十、一、四、五。合わせて二十で七隻、要ります。



そんなにツラツラ近づけば、釣り人や狩り人に見つかります。なのに見たなんて話、聞いていません。


西川は少なくても、鮎川は違います。多くの舟が、行き交います。



日が昇れば、誰かの目に。朝、早くても同じ。となると夜ですが、無いでしょう。


危な過ぎます。どんなに優れた水手かこでも、夜は漕げません。どちらも流れが速く、竿さおを取られます。



「霧雲山の統べる地に引き込んだのは、飯田の長、ボクさ。」


「クラさま。南の人たちは、鮎川から?」


「長はナゼ、そう思うのかな。」



暴れ川と曲川は、無い。残るは鳥の川。しかし、それも無い。


早稲わさから越して来た時、擦れ違う事は無かった。それでも目立っていた。手を振られたよ。



十一隻も七隻も、そう変わらない。ゾロゾロノロノロ、あの流れに逆らって進むんだ。時が掛かるし、見つかる。


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