表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
耶万編
442/1583

7-85 雲井の裁き


カタが聞こえる心の声は、近くに限られる。目の前に居なくても聞こえるが、離れると聞こえない。




大石の奴婢ぬひから聞こえるのは、耶万やまへの恨みつらみ。耶万が何を企み、どう動くのか。こちらの知りたい事は、何も知らない。


他の奴婢も同じ。何も知らない。そして、同じ事を考えている。


南へ戻っても、奴婢のまま。何も変わらない。奴婢は死ぬまで奴婢。ここでも同じだ、と。




心が壊れた娘たちは、どうにも。


何を言っているのか分からない。唯唯ただただ、死を希う。




女の子は怯え、助けを求め続ける。誰を求めているのか、何を求めているのか、全く分からない。


男の子は、諦めている。『殺してくれないかなぁ』『死なせてくれないかなぁ』と。それが願いなのだ。



やしろへ戻り、ハナを狙った男に聞こう。他よりは、話せる筈だ。






「オレは終われない。早く餌を奪って、耶万を釣らなきゃ。殺すんだ!滅ぼすために。」


・・・・・・愚かだ。


「なに見てやがる。サッサと放せ、殺してやる!」


・・・・・・なぜ?


「アァァァァァ。しくじった。何だアイツ、強すぎる。北の狩り人ってのは、皆アアか?」


知らないのか? 早稲わさの生き残りだと。


「アノおさ、まだ使えたのに。次のを狙うか。どぉせロクで無し。似たようなノが、なるんだ。」


・・・・・・いいや。マシなのを就ける。




「カタ。」


「耶万は、来るのか?」


「社で話そう。」






蔦山でのいくさ。仕掛けたのは、風見かぜみと早稲。負けを認め、戦は終わった。それから始まった、話し合いという名の裁き。


釜戸山では無く、乱雲山で開かれた。言伝の岩で、妖怪たちに囲まれて。




祝は雲井社くもいのやしろから、心の声で。社の司は、山裾で見張り。おにときから出た禰宜ねぎが、裁きを取り仕切る。


雲井の禰宜は闇を纏い、見えない全てを歪める。そんな力を生まれ持つ。だから、隠の世から出ない。出るのは、他の地との裁きだけ。




凄かったらしい。先ずグラグラ揺れて、ブワッと広がった闇の中から、禰宜が出て言った。『殺されたくなければ、従え』と。


それからツラツラ、犯した罪が挙げられる。禰宜は隠から、全てを聞いた。妖怪からも聞いた。禰宜は闇を使えるから、隠の妖怪も偽れない。



人が偽れば、直ぐ判る。祝には心の声が、禰宜には闇の力が。カンの良い妖怪たちも、付いている。一つ偽るたび、体が沈む。ズッズッと、沈んでゆく。




風見と早稲は誓った。この地から引くと。決して攻めない、仕掛けないと。


破れば死ぬ。村でも国でも、滅ぼされる。祝の一声で決まる。隠や妖怪が動く。目に余るようなら、禰宜が闇を。



生き物は死ねば、隠になる。どこにでも、いる。隠の目が光っている。守りたい人を、見守っている。隠が訴えを起こせば、雲井社が動く。つまり、次は無い。




蔦山の戦に、耶万は加わってイナカッタ。


頼まれて、つわものを送っただけ。攻めるようそそのかしたが、それだけ。どことか、どの辺りとか、示さなかった。



耶万は知らない。風見と早稲が引いた事は、知っている。しかし、なぜ引いたのか。何を恐れているのか、何も知らない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ