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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
耶万編
439/1582

7-82 オレは悪く無い


祝の力は、誰にでもさずかる物ではナイ。人を、村を守るため。神に御仕え出来る、選ばれた人。祝人はふりと祝女はふりめも、人のため皆のために尽くし、良くしてくれる。


やしろの司は神事かみごと、社の纏め、仕え人の纏めを行う、人のおさ。村や国の長は、他でも務まる。しかし人の長は、社の司にしか務まらぬ。


そんな御人おひとを、お守りくださった。



誰が責める、誰が責められる。誰も責めぬ、誰も責められぬ。良村よいむらの長が、飯田に居らなんだら? 社の司は死んでいた。そこに転がってるのに、殺されていた。




「ボク。長を降りろ。務まらぬわ、引け。」


「こんっの、クソババァ!」


ベダッ。


「はっ、放せぇぇ。」


シゲに縛られ、動けない。



コイツは人殺しだ。オマエも、オマエも、オマエも。親を兄をゆかりの者を、あのいくさで殺された!


コイツが殺した、コイツらが殺した。良村のは人殺し。殺して、殺して、殺し続けた。



犬も人殺しだ。


見ろ! 首を掻っ切られ、苦しみながら死んだ。見ろ! あの顔を。見ろ! 血塗ちまみれだ。オマエも殺されるぞ。良村の人に、犬に。




「黙れ! 戦を仕掛けたのは、飯田だ。」


「嫌だったのに。」


「仕掛けたから、負けた。」


「助けを求めれば、良かったのに。」


「仕掛けず、話し合えば。」


「なのに、長が仕掛けた。」


せがれも仕掛けた。」



「攻められたから、守った。」


「攻められたから、戦った。」


「何もしなけりゃ、傷つけない。」


「良村は悪くない。」


「悪いのは飯田だ!」



むくろを、葬ってくれた。」


「墓を作ってくれた。」


「今も花を供えて、手を合わせ。」


「山裾に、いつでも参れる墓を。」


「舟で行けるように、整えてくれた。」




「うっ、うるさい。黙れ、黙れ、黙れぇぇ! ンゴッ。」


石を投げられた。村人に、飯田の人に。


「やっ、めろ。いっ痛い。やっ。」




飯田には、年寄りが多い。若者が少ない。子の多くは、親を失った。


縁の者に、引き取られた子。親無しで、社に引き取られた子。中には、言の葉が出ない子も。






山裾の地に、戦で死んだ者が葬られた。そう聞いて、駆け出した。


居ても立ってもイラレナイ。話し合って決めた。釣り人に『舟を出して』と、頼み込む。




老いて衰えたおのを励まし、かすむ目をカッと開き、参った。どのように死んだのか、まったく分からない。知りたくも無い。


戦で死んだんだ。痛かっただろう、辛かっただろう。寒かっただろう、怖かっただろう。


恐ろしくて足がすくみ、血を流して死んだんだ。あの雪の中、真っ赤な血が飛び散って。それで、それで・・・・・・。




墓は大きく、直ぐ分かった。山の中なのに、開けていた。


木を切って、埋めてくれたんだ。大きな穴を掘って、放り込んだんじゃナイ。ひとり一人、葬ってくれた。見れば判る。丸くない。




「返せ。死んだモン残らず、返せ!」


大婆さまが叫ぶ。


「お、オレは悪く無いぃっ!」


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