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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
耶万編
438/1583

7-81 正当防衛


そりゃ、壊れるよ。顔が腫れてた。手にも足にも、縛った跡が。


言ったんだ。『殺して』って。言ったんだ。『死なせて』って。言ったんだ・・・・・・。




「葬ったのか。」


シゲの声は、ずっと低いまま。


「あぁ。加津だけじゃ足りなくて、千砂ちさとか会岐あきとか。他のに、手伝わせた。」


「なぜ、ここに? 敵を追って、来たのか。」


カタが問う。


「いいや、餌を取りに来た。前の国長くにおさがな、耶万やまのに言ったんだ。『ハナって娘が、とてもイイ』って。」


「なっ!」


カタが叫び、詰め寄る。


「渡さんぞ! 決して、誰にも。」


「落ち着け、カタ。コイツが言っているだけ。耶万が取りに来たんじゃ無い。」


「来るぜ。つわものを連れて、ワンサとな。」




敗れた男は十、この地の者では無い。見慣れない剣、見慣れない飾り。南から来たに、違い無い。


シゲが、調べる前に縛った。という事は、見抜いていた。


下見に来た、奪いに来た、調べに来た。飯田の村は西川に近い。鮎川から西山に入り、備えた。整い、飯田に来た。



だとすると東山社ひがしやまのやしろ、いや国長に使いを。西山は小さいが、険しい。狩り人の少ない飯田では、山狩り出来ない。



茅野にも使いは出すが、山狩りは頼めない。飯田の村は、狩り人が少ない。地が震える前には、それなりに居た。しかしいくさで、ほとんど死んだ。


茅野の狩り人が離れれば、飯田はガラ空き。守れない。連れて行くのは、飯田の狩り人だけで良い。






「いました、見つかりました!」


祝人はふりとが一人、走って戻った。


「どこから、幾人。」


カタが問う。


「南から。娘、四人。の子、六人。の子、三人。男は十、来たそうです。」


知らせに戻った祝人が、ヘナヘナと座り込んだ。



転がっているのも、十。皆、南の男だろう。剣を手に、叫びながら襲って来た。脅しでは無く、殺す気だった。犬を見ても、怯まなかった。


首に布を巻いている犬なんて、良村よいむらだけ。犬を見れば、早稲わさの生き残りだと気付く。そう聞いた。なのに躊躇わず、向かって来た。というコトは、知らずに?



人を殺す。許されない、重い罪だ。しかし身を守るため、誰かを守るためなら、認められている。このたびは、どちらも。


シゲは身を守るため、私を守るために戦った。シゲコは飼い主を守るため、戦った。あかし、見た人、聞いた人。全て揃っている。




「何て事だ。」


「信じられない。」


奴婢ぬひなんて。」


「酷い話だ。」


集まった村の人たちが、口口に。



「う、うるさぁぁい!」


ボクが叫ぶ。


「奴婢が何だ、殺してない。責めるなら良村を責めろ。人殺しだ! 見ろ、死んでる。コイツが殺した。」


醜く口を歪め、シゲを指差す。


「良村のおさは戦った。社の司を、守るために。」


飯田の大婆さまが、静かに言った。


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