7-78 その話、マジ?
「ダ、ズ、ゲデッ。」
「モヴ、ジマゼン。」
「ヒギマズ、ノデ。」
息が出来ない、体が重い。地の底からドロリと、何かが胸に。上からはドサッと、大岩が。そんな感じで、とても苦しい。
神? 隠神? 飯田神とは、違うのか。良村の神は、人にも。人を守るために、姿を見せる。そんな神に、敵うワケが無い。
死にたくない。引く。オレは引く。長が何だ、人なんて怖くない。
「よい、むら、に。いぎ、もの、に。でを、だじま、ぜん。ぎづ、づげ、ま、ぜん。の、でぇぇ。」
鼻と口から、血をダラダラ流しながら、ボクが言った。
「口では、何とでも言える。」
シゲが冷たい目をして、言い切った。
「そうですね。」
カタの目も冷たい。
助けてくれよ。社の司だろう? オレは長だぞ、飯田の長だ。そんな目で見るな。
これまで何も無かった。神なんて、初めて見た。声も、初めて聞いた。飯田神とは違うのか? 隠神、愛し子。何だ、そりゃ。
何を、どうしても勝てない。敵わない。それは分かる。解った。だから引く。手を引く。良村とは関わらない。近づかない。良村の人にも、生き物にも。
だから助けて。御願いします。死にたくない。オレは父さんや兄さんより、長生きしたいんだ。殺されたくない。
「お、ね、がい、じ、ばず。ゆる、じでぇ。」
「飯田神、大蛇神。二柱に誓うのです。決して、良村の生き物を傷つけぬと。」
カタに言われ、ボクが目を剥く。
「な、にを。グハッ。」
上から下から、大きく重い何かに挟まれ、目が眩む。
「・・・・・・ぢ、がう。ぢが、い、ばずぅ。」
「何を、です?」
カタの声が、低くなった。
「い、いだ、の、がみ。お、ろぢ、の、がみ。ぢ、がい、まず。げ、じでっ、よい、むら、の、いぎ、もの、を。ぎず、づ、げ、ま、ぜん。」
「畏み、畏み、申し上げます。大蛇神。どうか、御鎮まりください。」
飯田社。社の司カタが、平伏す。周りにいた飯田の人たちも、サッと平伏した。
「御願い、申し上げます。」
平伏した人たちが、口口に述べる。
サッと風が吹いた。皆、平伏したまま、動かない。
「蛇神、いや大蛇神。」
飯田神。使わしめヒオと共に、御出座し。
「分かった。飯田の人が誓うなら、それで良い。」
「積もる話は、社にて。」
ホッと為された飯田神、ニッコリ。
「その前に、ほれ。」
目線の先に、平良の烏が。
「大蛇神、飯田神。」
平良から離れ、隠の守が平伏す。
「して、人の守は何と。」
シュルッと、小さく御成り遊ばし、大蛇神。
「『飯田の村に奴婢、有り。調べよ』と。」
「・・・・・・カタ。長を問い質し、明らかにせよ。」
「ハッ。」