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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
耶万編
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7-76 御婦人方に大人気


「やぁ、カタ。頼まれ物、持って来た。」


「ありがとう。おさが来るとは、思わなかった。」


「ハナに会いに来たのさ。」



あの冬のいくさに駆り出され、死んだ祝人の娘。母は、美しい人だった。



ある日。父の死を知らせに、飯田の長が来た。そして有ろう事か、母を手込めに。しかも、娘の目の前で。ハナは十一。何が起きているのか、解る年である。


止めようと、母を助けようと叫んだ。口を塞がれ、噛み付き暴れる。それから直ぐ、長のせがれに穢された。母の、目の前で。



母は石器を持ち出し、戦った。娘を守ろうと、戦った。そして殺された。石器を奪われ、首をザクッと。


血飛沫を浴びたハナは叫び、倒れた。




気付くのが遅れたのは、長と倅が人払いをしたから。食べ物で釣り、周りの家から皆を。ハナの叫び声を聞き、家に飛び込む。


血まみれの娘、動かない母。引き裂かれ、乱れた衣。口には布が詰め込まれ、内股から血。誰が見ても解る。何が起きたのか。



長も倅も、認めなかった。あかしは、見た者は。そう言って逃げた。


村で起きた事は、村長が裁く。村長が仕出かせば、国長が裁く。その国長が、決して許されない事をした。ならば、釜戸社かまどのやしろへ。



訴えようにも、証が。見た者、聞いた者も居ない。母は死に、娘は言の葉が出ない。訴えても、逃げられる。



戦が終わり、植え付けも終わり、釜戸の裁きが始まった。


長は、戦を仕掛けた罪で。倅は、多くの女を穢し、殺した罪で。それぞれ裁かれ、痛めつけられ、火口へドボン。




倅に穢されたのは、ハナだけでは無かった。その数、二十九。茅野で為出しでかし、狩り人に捕まった。証、見た者、聞いた者。すべて揃い、下された。



裁かれても、処され行われても、時は戻らない。深く傷つき、壊れてしまった女たち。ハナは誰にも頼れない。ゆかりの者は、残らず死んだ。




ハナは、カタに引き取られた。社で引き取る話も出たが、飯田社いいだのやしろは男が多い。


カタも男だが、妻と娘を奪われた。飯田の長と、おかんなぎに。かたきは違うが、長が関わっているのは同じ。



はじめは、目が合っただけで怯えた。近づく事すら、出来なかった。それでも少しづつ、少しづつ。そうして、やっと。



少しだが、言の葉が出るようになった。切っ掛けはシゲコ。


良村よいむらの犬は、首に布が巻いてある。そこに子が、花を挿した。オシャレに目覚めた? 愛らしい姿を見て、ニッコリと笑った。






「やぁ、ハナ。前に話した、守り袋だよ。」


良村の子らが、心を込めて作った。布を織り、花で染め、チクチク縫う。川で拾った赤い小石を入れ、紐で縛れば出来上がり。


「わぁぁ。」


フワッと笑って、守り袋を胸に当てる。


「気に入ったかい?」


「はい。」


ニコッ。



「長、良村の長! 出て来い。」


飯田の長、ボクが叫ぶ。


「何だ、騒騒そうぞうしい。」


そう言いながらカタ。スッと、通せんぼ。




ハナが話せるのは、カタとシゲだけ。他の男は近づけない。まだ怖くて、恐ろしいのだ。


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