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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
耶万編
431/1584

7-74 ウキウキ、ルンルン


「いてきまぁす。」


舟からマルが、ブンブン手を振る。


「いってらっしゃぁい。」


手を振り返す、良村よいむらの良い子たち。



おにときへはチョクチョク出掛けるが、良山よいやまからはほとんど出ない。歩いて行くのも楽しいが、マルは舟に乗るのが大好き。


ワクワクが止まらない。



舟寄せから、スゥッと下る。山裾を出て、暫く進むと鮎川。光を受けて、キラキラ。マルの瞳も、輝いている。少し下れば、茅野の舟寄せだ。






「さぁ、着いた。」


慣れた手付きで、縄を引っ掛ける。舟を降り、みよしをグイッ。


「おいで、マル。」


「はいっ。」


優しく、舟から降ろされた。マルコはピョンと飛び降り、マルの元へ。シゲコも、ピョン。




「おはよう、おさ。」


茅野の禰宜ねぎが、お出迎え。


「おはようございます。ネネさん。」


「その子は?」


仔犬を連れた、蛇憑き。良村よいむらの子、となると?



「はじめ、まして。マルですっ。この仔は、マルコ。」


「キャン。」 ヨロシク。


祝の力を感じる。守り、かな?


「はじめまして。マル、マルコ。」



ネネは祝女。父から禰宜を継いで、三年みとせ。弱いが、守りの力を持つ。


茅野には、力の弱い人が多い。弱いのだが、祝の力を持って生まれる子は、驚くほど多い。




「とってもフワフワ。うちゅくしいっ、力。れすね。」


ニコッ。


「えっ?」


茅野の人は、誰も知らない。弱いが、質の良い力だと。



「久しいな、マル。」


「お久し、ぶりですっ。ヤノさま。」


茅野神かやののかみの使わしめ、ヤノ。ポンッと人の姿に化け、ニッコリ。






「いてらっさぁぁいっ!」


マルはシゲの姿が見えなくなるまで、手を振って見送った。


「行こうか、マル。」


大蛇おろちに声を掛けられ、ニコッ。


「はいっ。」


とっても良い、お返事。



楽しそうに歩くマルを見守り、ニコニコ。そんな大蛇に、申し訳なさそうにヤノが切り出す。



「蛇神、お気づきですか?」


「あぁ、濃いな。何があった。」




飯田。飯田の村と茅野の村が、一つになって出来た国。国の長は、飯田の長が務める。



イチの父兄は、いくさを仕掛けた罪で裁かれ、釜戸山で死んだ。生き残ったのは末の兄、ボクだけ。


占いで何でも決めようとする、困った男である。名は体を表す?



長のうつわでは無い。しかし他に任せられる人は、一人も。となれば荒れる。茅野の長に任せよう。いや、飯田の国を治めるのは、飯田の長だ。とまぁ、困った事に。


これから、どうなる。このままでは、いつか。そんな思いが闇を引き寄せ、渦巻いた。



飯田社いいだのやしろにも、祝がいる。社の司、カタの甥。大いなる地の声が聞こえる、祝人。


飯田神、使わしめヒオも、後見うしろみに。皆の間に立って、何とかしようと努めるが、どうにも困った事に。


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