7-72 目から鱗
フンフン、フフン。朝の山歩き。開けた所で、木の枝ポーン。
「マルさま。」
キョロキョロ。だあれ?
「双の祝、ナラと申します。」
「楢守の祝、シュウと申します。」
はじめまして、ナラさま。はじめまして、シュウさま。
木の声が聞こえる祝、か。タマは水と話せるって、ミヨが言ってた。上木の祝は、風の声が聞こえる。
でも、話せないよ。
スゴイな。木を通して、ずっと遠くにいる人と話せるなんて。ミヨは、心の声で話せる。でも見えていないと、話せないの。
タマ、ミヨ、タエ。みんな、どうしてるかな?
「マルさま?」
はい。
「双、楢守。共に隠れ里ですが、良村と結びたく。」
「里の皆、思いは一つ。守るため、良村と。」
話は、分かりました。
「では。」
私には、決められません。
「そう、ですね。」
双と楢守は、結ばないのですか?
「えっ。」
ナラ、シュウ。目から鱗が落ちる。
私は思います。木の声が聞こえる祝が、里を繋げば良いのにって。
隠れて暮らす里だから、隠れ里。どっちも隠れているから、分かり合える。出来る事と、出来ない事。したい事と、する事。それを話し合ってから、頼る。
そうでなきゃ、誰もウンって言わない。
良村は、とっても良い村です。みんな優しくて、強くて、賢いの。
他の里とか村とか、国とも仲良し。どこも和やかで、穏やか。助け合い、支え合う。守って貰うんじゃナイ、守るんです。いろいろ備えて、整えて。
私は子だけど、お手伝いします。
出来る事を、シッカリと。出来なくても、努める。諦めない、逃げない、俯かない。そうすれば、出来るの。
だからナラさま、シュウさま。出来る事をシッカリしてから、頼ってください。
ニコッ。
「・・・・・・仰る通り。」
「返す言の葉が、御座いません。」
マルに諭され、項垂れる。
「クゥ、クゥン?」 オハナシ、オワッタ?
フワッとした光に包まれて、ポワポワしてる。祝の力、なのかな。ねぇマル、そろそろ帰ろう。
「ナラさま、シュウさま。私、そろそろ帰ります。」
ペコリ。
「では、また。」
「御話し、しましょうね。」
はい、また。ニコニコッ。
「そっ、そこを何とか!」
双の狩頭、ツヨ。涙目。
「もう一度、言おう。結ぶなら、楢守と結べ。それから、嵓とも結べ。三つの里で固く結び、生き残れ。」
シゲに言われ、シュンとする。
「クゥ。」 アキラメロ。
シゲさんは長。長が皆と話し合い、決めたんだ。覆らない。話し合いには、忍びも居た。良村だけじゃない。
「さて、帰るか。」
「ワン。」 ハイ。
「そんなぁ・・・・・・。」
粘っても変わらない。ツヨは諦め、双へ帰る事にした。