7-71 投げちゃうぞ
「嵓が歪んでいるのは、解った。それでも使う。」
シゲがズバッと、言い切った。
双、楢守、嵓を結ばせ、見定める。付き合うとすれば、双を通して。楢守は、遠そうだ。
この度の戦。サッサと終わらせないと、酷い事になる。だから、嵓を動かす。
嵓だけじゃ守れない。解ってるんだ、勝てないと。だから良村を引っ張り出し、使おうと考えた。
それを快く思わなかったのが、嵓神の使わしめ、萬さま。オロチ様を慕っているなら、愛し子と共に良山に御坐す。そう、知っていなさるハズ。
神にとって愛し子は、我が子と同じ。そう聞いた。
つまり、オロチ様の愛し子が暮らす良村は、巻き込みたくない。慕う神の愛し子を、傷つけようとは思わない。と、思う。
「だから嵓とは結ばないが、嵓社とは結ぶ。」
「えっ、と。結べるのか?」
「人と神が、結ぶ?」
シゲの発言に、緋と謡が突っ込む。
「オレたちには、結べない。オロチ様なら結べる。そうですよね?」
シゲ、まさかの丸投げ。
「ブワッハッハ。良かろう。良村には、我の社が在るからな。」
マル特製、大蛇社。幼子が作ったにしては、立派です。
「毒嵓、起きろ毒嵓。・・・・・・アレ?」
頬をペチペチしようにも、萬には触れられない。
「起きなきゃ石、投げちゃうぞ。」
人には触れられないが、物には触れられる。
「投っげ、まぁす。エイッ。」
ゴンッ。大当たり!
「・・・・・・死んでる?」
「い、きて、ます。下ろして、ください。」
「忍びでしょ。石器とか投げて、下りなよ。」
双とも嵓とも、結ばないと決まりました。上木と樫の社へは、忍びが。とはいえ、良山は罠だらけ。
いくら緋や謡でも、危ない。よって二人は夜が明けるまで、麓の家でスヤァ。良村の皆は村へ戻り、大蛇社を参拝。それから、グッスリ。
大蛇は、嵓社へ一っ飛び。議りの末、四つの事。アッサリ決まりました。
一つ。嵓の隠れ里を動かさない。
嵓の毒に要る草や花などは、他でもチョコッと採れます。
実はコレ、絶滅危惧種。やまと自然保護団体発行『朱綴じ』にも載っている、珍しいモノ。どういうワケか、嵓社の近くにボウボウ、生えています。
つまり、社ごと引っ越し。なんてコトになれば嵓神、御隠れに。
二つ。霧雲山の統べる地において、毒を使わない。
毒、ダメ絶対。狩りに使うのは、許されます。食べるため、ですので。
三つ。話がある時は必ず、社を通す。
祝から使わしめ、使わしめから神。神と神が集い、議ります。話が纏まれば、神から使わしめ。使わしめから祝と、相成ります。
四つ。祝の力を神の許し無く、使わせない。
嵓社の祝には、水を操る強い力が。
目の前にいる生物の、血の流れを止める。つまり眺めるダケで、大量殺戮可能。
死因は窒息死、証拠も残らない。とまぁ恐ろしい力を持って生まれたにも拘わらず、これまでは野放し。
急ぎ、許可制に! 神様連合の査察、入っちゃうゾ。
里を守るためなら厭わず、命を奪える。それが、嵓社の祝。時が違えば、スタンプラリー必須です!