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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
耶万編
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7-69 危ないんだ


「なぁシゲ。ふたなり、それにいわお。どうする気だい。」


「オレはな、カズ。双、楢守ならもり、嵓。三つの隠れ里を結ばせ、見定めようと思う。」



双も嵓も、信じられない。


双は里を守るために、嵓を売った。嵓は里を守るために、双を使った。そんな里と結べば、どちらも同じ。良村よいむらを売る、使い捨てる。



オレは良村を守る。何があっても、どんな事になっても守り抜く。それがおさだ。結んだり、付き合いのある里や村。国の長だって、同じだろう。


いざと言う時は、形振なりふり構わず足掻あがく。だから、動くのは分かる。分かるが双、嵓の遣り口は汚い。似てるんだ、早稲わさに。




早稲は奴婢ぬひを使わない。攫ったり逃げ込んだ人を、奴婢にしない。「早稲の他所の」人として、扱う。


言いたくない、思い出したくも無い。そんな扱いだったが、奴婢では無かった。



南じゃ珍しい。


他の村、国では当たり前のように、奴婢がいる。でも、早稲には一人も。だからって、良い村とは思わない。




双も嵓も、使い捨てられる『他所の』人が欲しいだけ。


危ない事、嫌な事、酷い事。何でも押しつける。『双や嵓と結ぶってのは、そういうコトだ』とでも言って、いる気だ。



そんなのと結ぶかよ。そんなのと付き合うかよ。


そんなの、信じられるか? オレは信じない、信じられない。だから双とも、嵓とも結ばない。付き合わない。



だがな、皆が幸せに暮らすのに要る。要るってより、使える。あの辺りに嵓の里が在る限り、嵓の毒に怯える事は無い。毒嵓どくらに怯える事も無い。



「それに、危ないんだ。」



耶万やまは絞り込んだ。嵓の里が、どの辺りに在るのか。だから、流山から引いたのさ。



いくさに慣れてりゃ、考える。


山を越えるより、川を上がろう。森を抜けるより、川から行こう。舟なら、多く乗せられる。人も、物も、犬も。歩いて運ぶより、ずっと良い。舟を使えば、多く運べる。



耶万は、川から近い。


滅んだけどうね、伊東、大石。やす、大野、光江みつえ。久本、松田、井上。会岐あき加津かづ千砂ちさとか。戦好きは、皆そうさ。



滅んだ村、国。どれも酷い、どこも酷い。


川から近いから、攻めやすい。仕掛けやすい。勝てれば良いけど、負ければ終わり。人も物も、奪われる。舟で遠くへ、運ばれる。




「双は分からんが、嵓は知っている。だからおののき、狼狽うろたえた。耶万に攻められれば、勝てないと。負ければ直ぐ、奪われると。」



南からは上り、嵓からは下り。近くの木を切って、いかだを組む。それに乗せて、嵓の人を運ぶだろう。逃げないように、きつく縛り上げて。落ちないように纏め、束ねて。


人じゃ無いからな、奴婢は。物として扱われる。



攻められる前に毒を使えば、里の人も死ぬ。ずっと南で使っても、同じ事。食べ物に困る、手に入らない。


どことも結んでいない、隠れ里。他に頼れないなら、奪うしか無い。



奪い続ければ、知られる。嵓が困っていると。奪い続ければ、見つかる。後を付けられ、嵓の隠れ里が。なら他の忍びにって、頼れるか?



「確かに。もし上木が嵓から『結ぼう』と言われたら、断る。直ぐに。」


「樫もだ。他の忍びなら一度ひとたび、考える。嵓なら断る。直ぐに。」


あかうたも、見知っている。嵓の、毒嵓のたちの悪さを。


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